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2010/01/21- Message


①: 今回の一連の作品の中で、一番始めに公開した十六枚の油彩の連作。

②: 上記の連作をPhotoshop上で合成して浮かび上がってきた画像達。

③: 作品の仕掛けや狙いを解説したライブの記録映像。


1月17日、本作『Message』の発表や解説を兼ねたライブを行いました。上手く行くかどうか半信半疑の中での決行でしたが、結果的にピーク時100人超という想像していたよりも遥かに多い視聴者に恵まれ、無事終わらせる事が出来ました。まずは当日観て下さった方々にお礼を申し上げたいと思います。どうも有難う御座いました。

さて今回の『Message』ですが、これはその主体を何処に置くべきなのかは非常に悩ましい作品です。十六枚の絵画の連作なのか、それらを組み合わせた時に浮かび上がってくる新たな一枚こそが本体なのか。或いはその組み合わせていく行為に本質があるのか。更にそれらを解説したライブこそが作品なのか。作り手としてはとても一つに絞る事は出来ない、多くの要素を併せ持った複合的な作品であるとしか言えません。

この作品について理解してもらうに当たり、上記ののライブの録画映像を一通り観て頂くのが最も理想的で有り難い。しかし2時間もの大ボリュームの映像を全部観るのは現実的にとても難しいので、今回この場で改めてこの作品について簡単に説明していきたいと思います。尚詳しい話やこぼれ話も聞きたいという方は、是非ライブの録画映像をご覧になって下さい。

■Photoshopを使ったパズル

本作は凄く平たく言えば、Photoshopのレイヤー機能を使ったパズルと言うのが適当でしょう。Photoshopのレイヤーには様々な機能があり、特にオーバーレイやハードライト等の各種描画モードは、レイヤーの重なり方や画像の見え方に多用な変化を与えます。これを利用し、複数の画像の重なり方やどの描画モードを使うのかという事を全て計算した上で一枚一枚を設計していけば、それぞれは独立した絵画として成立しつつも、それらを正しく組み合わせればそこから更に新たな絵が出来上がる、そういう作品が作れるのではないかとひらめきました。


組み合わせていく際ヒントになるのが、の十六枚の画像にそれぞれ記してある謎めいたコードです。上記の画像の場合"Ps-L10-HA"とありますが、始めの"Ps"はPhotoshopの頭文字から取って"Ps"、つまりPhotoshopを使えという意味。次に真ん中の"L10"はその画像をレイヤーの何枚目に置くのかを示しています。これであれば十枚目。最後の"HA"はそのレイヤーの使用する描画モードをイニシャルで示しています。"HA"であれば"比較(暗)"、"OL" であれば"オーバーレイ"、"PL"であれば"ピンライト"といった具合です。これに基づきそれぞれを組み合わせていけばの様な画像が浮かび上がってくるのです。

■毎回出来上がるものが違う

ただここで問題になってくるのは、これら十六枚は全てアナログの油彩であるという点です。アナログですからそのままではレイヤー合成は出来ないので、デジカメで撮影する等何らかの方法でデジタルに取り込まなければいけない。しかしアナログのものをデジタルに移し変えようとすると、光の反射やレンズの歪みだとか言った様々な自然現象の不可抗力が生じ、必ず何らかの劣化が生じてしまいます。


の十六枚の連作は最終的には油彩と言う形にしましたが、最初の設計はデジタル上で行いました。そしてこれはの一番右下にもある画像ですが、デジタルの何の劣化も起きていないデータを寸分の狂いも無く組み合わせると、実はここまで綺麗に画像が浮かび上がってくるのです。

しかし現実的には油彩をデジタルに置き換えようとすると大きな劣化が生じ、の左から数えて一枚目から八枚目の様に凡そ精密とは程遠い混沌とした画面になってしまう。しかし逆に捉えると十六枚もあるからこそ、一つ一つの劣化がレイヤー合成により十六枚分重層化され、単なる劣化を超えたある種の絵画における質や味、或いは表情になっている、そういう見方は出来ないでしょうか。

更にアナログの不可抗力は、作品に二度と同じものは出来上がらないという性質をも与えます。もう一度の一枚目から八枚目を見て頂くと、どれも一つとして同じ画面になっていないという事が分かるはず。これにより本作はレイヤー合成というデジタル上でしか再現できない画面と、アナログの唯一性や揺らぎをも同時に内包したものになっているのです。

■皆様のお手元でも体験できます


先ほども触れた様に、の十六枚の連作は最終的には油彩という形にしましたが、始めの設計はデジタル上で行われました。上記の画像はその言わば大本の原画。今回この原画十六枚分を配布致します。そしてこれを使えば、皆様のお手元でも本作のパズル、またアナログの揺らぎにより画像が多様に変化する様を体験する事が可能です。

の九枚目から十二枚目は、の油彩の方ではなく、上記の様な原画を十六枚分直接プリントアウトしたものをデジカメで撮影して出来上がった画像です。油とは若干異なった質感になっていますが、ここでも一つ一つ全く違うものに仕上がっていますね。例えプリントアウトしたものを使っても、本作のエッセンスは十分に味わうことが出来るのです。

更に十三枚目は普通のデジカメではなく、携帯電話のカメラで撮影して作ったもので、十四枚目は原画をプリントアウトせずにモニターに映したものを直接携帯電話で撮影。また十五枚目は僕の友人に頼んでプリントアウトした物をデジカメで撮って作ってもらった物。微妙な環境や使うデバイスの変化が十六枚重なる事で増幅され、ここまで毎回違う仕上がりになる。

■『Message』の遊び方

前述してきた事と重複する部分もありますが、ここで本作の遊び方を今一度ご説明いたしましょう。

『Message』製作キット

必要な物: 『Message』製作キット、プリンター或いはモニター、デジタルカメラ或いはカメラ付き携帯電話、Photoshop

1. 『Message』製作キットに入っている原画十六枚を全てプリントアウトする。もしくはモニターに映す等、とにかく画像をデジカメで撮れる状態にする。紙質やモニターの機種は問わない。
 
 
2. プリントアウトした物、またはモニターに映した画像をデジカメで一枚づつ撮影する。撮った写真をPCに取り込めるならば携帯電話のカメラでも構わない。撮り方は自由だが、基本的にぶれてしまったり傾いてしまったりしても気にせずに撮る。
 
 
3. 撮った写真をPCに取り込み、それぞれを原画のファイル名に書かれている暗号順にPhothospで組み合わせていく。例えば"Ps-L08-HL"ならば"L08"=レイヤー八枚目、"HL"=描画モードのハードライト(Hard Light)という様に解読していく。
 
 
4. Photoshopでの組み合わせ方は、まず一枚づつトリミングツールを使って余計な余白を無くし、それを暗号順に重ねて行く。サイズが合わない場合は変形ツールを使って調整。各レイヤーを暗号で指定された描画モードにし、極端に明るすぎたり暗すぎた場合は明度調整も行い画面を整えていく。
 
  
5. 撮った写真によって被写体の撮れ方がまちまちで、重ねていってもズレてしまう事が良くあるが、気にせずに兎に角組み合わせていく。全て組み合わさった後はレイヤーを統合し、メニューから編集→変形→遠近法を選び、画面四隅の傾きを調整する。
 

完成!!

■お便りお待ちしております

bananabona λ hotmail.com (λ→@)

BaNaNaBoNaは本作に対する皆様のお便りをお待ちしております。これをやって下さった方は、出来上がった画像を使ったデジカメやプリンタ等の機種の情報を据えて、是非僕のメールアドレスへ送ってください。またPixivをご利用の方は、そちらのイメージレスポンス機能を使って頂いても構いません。

きっとこの作品は皆様の十人十色の環境で作れば、ここまでで僕が見せてきた物以上に十人十色の物が出来上がるでしょう。本作を次につなげて行く為には、環境が変わる事によってこれにどういった変化が現われるのかというデータがもっと必要なのです。どうか宜しくお願い致します。

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