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2010/07/13- 機材がひしめき合っている様子が好きだから


最近はコンソールの作品が続いていた為、もっとザラついたPCゲームらしい作品を遊びたいという事で、積みゲーやMOD漁りをしていました。PCゲーム的な空気を今でも味わいたければ、どうしてもメジャーから離れてそういう方向に走らざるを得ません。周りを見ても昔気質のPCゲーマーだった人達は、今では過去ゲーに浸るか、マイナーゲームに走るか、MODに流れるかって感じで、反面メジャーゲームからは実質退いてしまっているというパターンを良く見ます。現代は最早PCゲームが淘汰されつつある時代から、完全に淘汰されてしまった時代になりました。

その点自分はメジャーゲームには相変わらず良いところ、凄いところはあると思っているし、また作品が面白いのであればプラットフォームがPCかどうかは拘らない、そういう姿勢でメジャーのトレンドを追い続けています。時代に適合しているとも言えるし、寧ろ流されているだけの半端者とも言えるかもしれない。しかしそんな僕でもやはり未だにPCがホームであるという意識は相変わらずあるし、10年近くその環境で遊んでいると、今では失われてしまった過去の様式だとか作風を懐かしく思うこともあります。

そう言うわけで前置きが長くなりましたが、今回はそんなノスタルジックな気分も軽く踏まえつつ、今回と次回とで二つの作品を紹介してみたいと思います。

■The Chronicles of Riddick: Assault on Dark Athena


隠れた名作『The Chronicles of Riddick: Escape from Butcher Bay』の続編。前作は時代の変革期とも言える、かの『Doom 3』と『Half-Life 2』が頂上決戦を繰り広げていた04年にひっそり発売され、全くの無名だったにも関わらずその完成度の高さから一躍話題になった作品です。このシリーズを開発したStarbreeze Studiosは前作の他にも『The Darkness』というこれまた傑作を作っていて、いつも大作と鉢合わせで影が薄いのが残念であるものの、技術力は高いし同時代的なムードを察知するセンスにも長けた、知る人ぞ知る凄いスタジオなのです。

しかしそういった実績と比べると今回の作品は今ひとつ魅力が無かったというのが正直な所。本作は新作の『Asssault on Dark Athena』の他に前作のリメイク版も入っていて一見太っ腹ですが、肝心の新作の方は基本的に前作のゲームデザインの焼き増しで、続編というよりも拡張パック程度の内容量で新鮮味がない。そういう訳だからどうしてもこれがStarbreezeの本気ではない、次の新作までの繋ぎで作ったんじゃないかと思ってしまうんですよね。これが今まで積んでいた理由。

とは言えここは腐ってもStarbreeze、新しいか或いは挑戦的かという事を除けば、ゲームとしての完成度自体は相変わらず高く、特に前半のDark Athena編は珠玉の出来。前作のラストでButcher Bayから脱出したRiddickとJohnsは、乗っていた宇宙船ごとDark Ahtenaという傭兵集団が支配する巨大宇宙船に囚われてしまう。

前作同様そんな絶望的状態から始まる本作は、これまた前作同様ナイフ一本のステルスプレイから始まり、そこから次第に敵の戦闘力を奪っていって、最終的には強力な火力で敵を薙ぎ倒していくゲームプレイへと変化していきます。このハイテンポで目まぐるしくゲーム性が変わっていくのがこのシリーズの特徴で、本作の前半はそれを忠実に引き継ぎつつ新要素を加えてパワーアップ。特に面白いのが最初の方は銃器が一切手に入らなくて、唯一の遠隔攻撃手段がDroneという銃と腕が一体化した敵を倒して、その死体を担いで間接的に銃撃するしかないというところ。


これによってあくまでもコソコソとしたステルスが主体でありながら、一度敵を倒せば一転して銃撃戦に持ち込む事も出来てゲームプレイに華を添えています。但しこの銃撃は強力ではあるものの、弾が切れたらリロードは出来ないし、死体を担いでいる間は殆ど一切の身動きが取れなくなってしまう。更にはその場面で使い終わったら投げ捨てて再び丸腰にならなければならず、プレイヤーがオーバーパワーになり過ぎない様に作られているのもとても上手い。あくまでもステルスという基本は揺るがないわけです。

勿論これは序盤の話で、中盤以降はどんどんRiddickは敵の力を奪って強くなり、ストレートな銃撃戦が増えてきてこれはこれで面白い。またシリーズではお馴染みの敵のパワードアーマーを奪って無双する展開も健在で、しかも今回は例のDroneを遠隔操作で操る場面も登場します。今まで自分を虐げてきた奴らに、奴らが使っていた武器を奪って全く同じ事をしてやる征服感。或いは今まで不自由な操作を強いられてきたものを、完全に自由に操作する支配感。Starbreezeはこういう飴と鞭の描きわけが、シナリオ的にもゲームプレイ的にも共に優れていますね。Riddickの心理がシナリオだけでなく、ゲームプレイとして共感できる様に作られている。

しかしキレが良いのは前半までで、後半の惑星Aguerra編になると極端にクオリティが下がるのがとても残念。一言にしてバラエティが足りない。前半はステルスあり、銃撃戦あり、肉弾戦あり、アドベンチャーありと約三時間程のプレイ時間の中に沢山のアイディアが詰め込まれていたのに対し、後半は基本的にSCARというリモート爆弾発射銃を使った戦闘一辺倒。それが面白いのなら別に構いませんが、実際は作品に詰め込まれているアイディアの中で一番つまらない。


まずSCARという武器が弾速が遅い上に連射も遅いわ、爆風範囲が狭くてほぼ直撃させないと敵を倒せないわでとても扱い辛い。それに元々この作品自体敵とプレイヤー共に動作やエイミングに癖があって、シューティングとしてみた場合特別優れているわけではないので、これとSCARの不便さが加わるともう不快で不快で仕方が無い。

またプレイヤーがハンディキャップを抱えるのとは裏腹に、敵の量は増え更にSCARを使わないと倒せない敵が出てくるのも不快度を高める。当然難易度も上がりゲームオーバーの頻度も一気に増え、しかもチェックポイント式なので今までのテンポの良さが全くなくなってしまう。ちょっとどうしてこうなっちゃったのって感じですね。

終盤SCAR以外の武器が手に入ったり、Prototype Droneを操作する場面で若干調子が戻ってきますが、それでも前半と比べてクオリティの差は歴然。仮に前半だけだったり、その調子がずっと続けば躊躇無く傑作と呼びたいところなのですが、対する後半の出来によってそんな好印象も相殺されてしまいます。

その他気になる点としては前作の特徴の一つだった肉弾戦とアドベンチャー要素はかなり簡素化されていますね。前者の場合はまず殴り合う場面自体が減った上に、本作ではゲーム開始早々Ulaksという万能近接武器が手に入ってしまうので、肉弾戦は殆ど苦労する事無く進めてしまうのも簡素になったと感じる原因。

もう一つのアドベンチャー要素は前作の同じ場所を行ったり来たりさせられるお使い的内容が不評だったので、それを受けて大幅に減らしたのかもしれません。そのお陰でテンポがより良くなったのは確かですが、一方で前作のアドベンチャーパートは作品の世界観を表現する貴重な場面だったので、それが大幅に減ってしまい前作ほどRiddickの周辺以上に話が膨らんでいかない。個人的にはあのアドベンチャーパートは嫌いではなかったので、お使い気味な所は当然直すとしても、NPCと触れられる機会自体をゴッソリと無くすのはやり過ぎだと思いますね。


世界観ついでに言うとメインのストーリーも映画版との繋がりをしっかり意識して作られていた前作と違い、本作は明らかに取ってつけた感じで終始投げやりというか浮いている。特に前作の重要人物で、映画版第一作『Pitch Black』にも登場するJohnsは今回は物凄く適当な扱われ方で、終盤はその存在自体が無かったかのように全く触れられないままゲームが終わってしまう。

以上の事を全て踏まえるとやはり新作というよりかはとても出来の良い拡張パックという感想になりますね。本作は一部新規要素があるものの基本は前作の要素を踏襲しているだけであり、一番の新規要素がよりにもよって一番出来が悪いという事態になってしまっている。更に世界観の説明が貧しく、前作を既に遊んで下積みがある人ならまだしも、そうでない人にとっては軽薄に感じてしまう恐れがある。そういう一つの作品として独立しきっていない所がいかにも拡張パックっぽい。

もっとも本作は前作の『Escape from Butcher Bay』もリメイク版がまるまる一本入っていますから、そちらを先に遊ぶ事を前提で作ったのかもしれない。それに本作で初めてこのシリーズに触れるという人にとっては旧作も新作も関係ないですから、僕が書いた軽薄さだとかは特別感じないのかもしれない。だとしてもStarbreezeの実力を考えるともっと何か大きいのが欲しいよなぁ。やはり次回作までの繋ぎにしか思えないです。

さて最初の方に書いたノスタルジックさは何処にあるんだって話ですが、それは今まで書いてきた事とは全く別文脈で本作のSF世界観、特に見た目の部分にありし日のPCゲームに通ずる趣を感じたのです。本作の様な硬派なSFって7年くらい前まではごまんとあって、例えば『System Shock 2』なんてのは正に見た目は本作そっくりだったし、他には『Unreal』もシリーズごとに毛色を変えてきたけどSFを真正面から取り組む姿勢は貫いていた。そういう作品が傑作凡作問わず沢山あったのです。


ところが近年はそういうのは食傷気味だよねって事で『Halo』だとか極一部を除いて正統派のSFは減退、ミリタリー物が幅を利かせてきたり、SFにしてもミリタリー要素を掛け合わせたりと変化球を投げるようになりました。かの『System Shock 2』の精神的後継作である『BioShock』が、海底都市を舞台にしたアール・デコ調の世界観になってしまう時代になったのです。

この傾向自体はどんどん新しい物が生まれてくるのでとても良い事。実際『BioShock』の世界観はゲーム史に残る素晴らしいものです。只その一方でガチなSFが減少してきたのは寂しいのも事実で、マニアしかやらなさそうなB級C級ならいざしらず、メジャーでは本当にど見なくなった。最近で目立ったものとしては『Dead Space』くらいかな?

だからメジャーの作品である本作が硬派なSFを貫いているのはとても貴重で懐かしい。また終始たった一人で孤独に敵と戦っていくゲームプレイも、最近の仲間が居て当たり前な風潮の中ではかえって新鮮。更には投げっぱなしなストーリーでさえ、確かに現代を基準に考えたら問題だけれども、昔はそんなの当たり前だったのでこれまた懐かしさを感じてしまう。この印象は五年前の前作よりも高まっていますね。現代のゲームらしさも当然ありながら、同時に昔ながらの趣も含んでいる。僕はそういう所に本作の魅力を感じます。

ちなみに昔ながらのFPSの良さについては最近見直され始めてきていて、EpicとPeople Can Flyが共同で開発している『Bulletstorm』や、06年の『Black』を手掛けたStuart Black氏が中心になり開発されている『Bodycount』等、現代的アレンジを施しつつオールドライクシューターの面白さを今に復活させようとする動きがチラホラと出てきています。その内『Bulletstorm』はかなり直球なSF世界観な様でそちらの点でも期待大。これを期に本格SFが再びFPSの第一線に舞い戻ってきて欲しいですね。

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