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2010/10/27- 迷・走が止まらない!
『Medal of Honor』が届いたので冒頭部分をプレイ。異母兄弟の『Call of Duty』シリーズにミリタリーFPSの王者の座を奪われたのが2007年。それから暫く沈黙していましたが、遂に今年『Call
of Duty』シリーズに同じく、自らも舞台を現代に移して玉座奪還に挑戦しました。しかし発売の後売り上げは堅調な一方で評価は期待ほど高くはなく、謀反第一回目は失敗という見方が強いようです。
などといきなりオチがついてしまいましたが、発売後の評判は勿論、発売前のプロモーションでも今ひとつ『Call of Duty』シリーズとの差異が分かり辛く、僕自身もそこまで期待値は高くありませんでした。ただ一方であのEAが曲がりなりにも威信をかけて作っているみたいだったので、まぁとりあえずチェックだけはしていたのですが、実際やってみるといきなり鼻息荒くしたところで、急に良いものが作れるようになるわけではないんだなぁと痛感しましたよ。
本作にとって兎に角一番辛いのは、全ての要素が『Call of Duty』シリーズと比較評価されてしまうところでしょう。まぁ発売前にあれだけ対抗心剥き出していたのだから当然だし、ここまで内容が似ていると例え前評判が無かったとしても比べられるに違いない。それくらい似ているし、勝っている要素が全く無い。
ゲームプレイ、グラフィックス、技術的な部分からセンスに至るまで、対処療法ではどうにもならないくらいの歴然とした差があります。また『Call of
Duty』シリーズにはない本作ならではの個性が無いのも、この様な単純比較で優劣がつけられてしまう原因でしょう。一応本作は"米軍エリート部隊のTier1オペレーターが、アフガン戦争で繰り広げた実体験に基づいたリアルな戦場体験"が売りらしいけど、現状ではTier1という一種のブランドが前面に出てくるのみで、ゲームプレイとしてその持ち味が伝わってこない。
いや作戦内容とか武器の扱い方とかは本当にリアルなのかもしれないけれど、別の言い方をすると凄く地味。で、それって『Call of Duty』型のゲームで必要な事なのかっていう話なんですよ。仮に『Armed
Assault』の様なガチガチのミリタリーシミュレーターであるならば地味さも味の一つになり得ますが、『Call of Duty』型のレールライドシューターにとっては映画的な体験が第一で、それは実際の戦場のリアリティとは必ずしも同一ではない。本作はこの辺を見誤っている気がします。
実際『Call of Duty 4: Modern Warfare』も、『Call of Duty: Modern Warfare 2』も全然リアルではないからね。あそこで描かれている現代戦や特殊部隊ってのは非常にキャラクター的で、武器や戦場のディテールの作り込みもキャラ燃え感覚に近いところがある。逆に作戦が現実的に理に適っているかだとか、史実に忠実であるかとかだとかいった、ミリオタでなければ分からない小難しい部分は全て二の次で、それよりも演出的な派手さの方を優先している。
つまり現代戦というテーマの中でそのまま燃えられる要素は徹底的に再現し、そうでない部分は燃えられる様に徹底的に脚色。でなければ『Call of Duty: Modern Warfare 2』のラストの、男二人が敵部隊を全て壊滅させるという無茶苦茶な展開にならないでしょう。『Call of Duty』シリーズは現代のランボーであり、リアルというよりも非常に劇画的、或いは歌舞伎的。もうむせ返るくらいのエンターテイメント史上主義であり、それで僕はあのシリーズは大ッ嫌いなんだけど、しかし良くも悪くもそれで唯一無二の体験が生み出せているのは確かだし、だからこそ売れる。
『Medal of Honor』に話を戻すと、本作は『Call of Duty』シリーズのそういう側面を把握しきらずに真似たから、リアルにしたいのか派手に行きたいのか良く分からない中途半端な雰囲気になってしまったんじゃないかと、僕は考えます。もしくは把握はした上で差別化する為に敢えてこういう路線に舵を切ったのかもしれないけれど、本作がやっているリアル化ってどう考えてもニッチ路線だからね。『Call
of Duty』シリーズ以上のエンターテイメント性をそれで発揮できるとは思えないし、またこの程度の半端さではガチのミリオタも満足しないだろう。それどころか実際はアフガン戦争というデリケートな問題を扱ったばかりに、戦没者の遺族を中心とした抗議活動も発生していて、正に誰が得するのか分からない状態になっている。
また万が一本作が『Call of Duty』クオリティに迫れたとしても、それでも『Call of Duty』の亜種以上の立場にはならなさそうなのが、より一層辛い。やはりこの路線自体がそもそも無理があるんじゃないかと思います。一方さっきは『Call
of Duty』に勝っている要素が全く無いと書いたけれど、実は僅かながら『Call of Duty』には無い強みならぬ味もある。例えば銃撃音を含めたサウンドは、空間での反響やドップラー効果を再現していて、他にはない臨場感がある。またグラフィックスもテクスチャやモデリングの密度は及ばないものの、Indirect
Iighting技術を用いた色彩感ある反射光表現は中々良い。この辺はEA DICEが過去に開発した『Battle Field: Bad Company』シリーズや『Mirror's
Edge』で培ったノウハウが活きているんだと思う。
こうして見ると、やっぱり良い所には根拠があるわけです。ローマは一日にしてならず。何の実績もなしに、いきなり大当たり何て出来ません。無闇に『Call
of Duty』コンプレックスに走るのではなく、自らの長所を把握して、それを最大限活かす事で他にはないゲームを作って欲しいです。
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