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2009/01/28 - セガールの方ではない


『Call of Duty: World at War』のイデオロギー臭さに辟易したのと同時に、とあるゲームを思い出しました。パレスチナで開発されたFPS、『Under Ash』です。今回はその続編の『Under Siege』のデモ版をやってみました。イスラエルとパレスチナ間の紛争をモチーフにした、タイムリー過ぎる作品。

『Under Siege』公式サイト
4Gamer.net - アラブの戦士としてパレスチナで戦うPCゲームが開発される
4Gamer.net - 奥谷海人のAccess Accepted 第8回「ゲームで政治する」
4Gamer.net - 奥谷海人のAccess Accepted 第82回「珍しいストラテジーゲーム三連発」

開発された国が国なので、日本では唯一4Gamerのこれらの記事から断片的に知るしか手段が無い。ちなみに僕は英語は殆ど読めないので(ゲームの字幕を目で追ってその場で理解していくのは到底無理なレベル)、海外の情報はWikipediaにあるもの位しか掴めていない。一応Gold Editionなるものは英語圏でも発売されているらしいが、大手メディアではかすりもしないしeBay覗いても無い。なので何か情報知っている方は教えてください。

しかしそんな八方塞な状態で僕がこの作品を知ることが出来たのは、昨年秋口に参加したGrasshopper Manufacture主催の「洋ゲー不法集会」で、ちょこっとだけ紹介されていたからなのです。ゲームとイデオロギーの話で、西の最右翼が『America's Army』ならば、中東は『Under Ash』だと。そこでも上記の記事以上の情報は触れられなかったのですが、それでも反響は大きかった。

『Under Ash』ではイスラエル占領に反旗を翻し、投石から始まりレバノン南部を開放していくシリアスな設定。それは続編に受け継がれ、『Under Siege』では第2次インティファーダを舞台に、実在の人物達の境遇に焦点を当てたドキュメンタリーゲームとしての側面も持ち合わせているらしい。

デモ版では敷地内の敵を一掃し、敵から奪ったRPGで装甲車を撃破、最後に建物最上階のイスラエル国旗をパレスチナ国旗に挿げ替えて終了。






開発者は『America's Army』と『Delta Force』から影響受けたと言っており、『America's Army』はともかく『Delta Force』に関しては言われれば確かにどことなくそんな気配は感じられます。が、如何せん素朴すぎてこれらと比較するのもはばかられる。

しかし技術的な落差が著しい一方、ゲーム作りに対する情熱に落差があるとは思えないという所にもまたカルチャーショックを受けてしまう。『Under Siege』は三部作として06年から発売され続けており、『Crysis』でお祭り騒ぎになっているその反対側ではこのような作品が息づいているわけです。お互い自身の持てる技術を最大限駆使してね。

それでもゲームでドキュメントするその手法が、欧米生まれで育ちのFPSを活用しているという点が何とも皮肉めいている。それは本作の公式サイトやTrailerでも言える事で、アラビア文字で占めれているのに、そのソースコードやアドレスはアルファベットという皮肉。常識ではあるけど、その常識レベルにまで染み渡っている欧米のグローバリズム戦略にも改めて驚かされます。

ただ逆に言えばお互い国は違えど共通のゲームジャンルに面白みを見出せるということは、それを通じて分かち合うことも不可能ではないのでは・・・ という考えは平和ボケ国民の寝言でしかないか。FPSを通じた国際交流だなんて悪いジョークでしかないか。

これ以上の話をしていくとパレスチナ問題そのものに首を突っ込まなければならないので、流石に僕の手に負えないことになってしまいますが、何にせよ、政治的意味合いからしても、純粋なゲームとしてみても非常に興味深い作品ではあります。しかし前述した通り入手は絶望的な状態なのが悔しい。ハードコアゲーマー層にはロシアゲーが人気ですが、そこから更に飛躍して第三世界のゲームも遊んでみたい。という事で何か情報知っている方は教えてください。

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