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2009/03/01 - Pixivフェスタ・・・


今日はPixivフェスタへ行ってきました。一応Pixivのようなサービスが主体の展示会というのは今までにない試みなので、どういったものになるのかという興味がありました。また僕自身Pixivを利用している者の一人としても見逃せないしね。

いやぁしかし・・・、これはアリかナシかで言えばナシですね。言ってしまえば美大生の道楽の個展・グループ展と同レベル。そもそもその個展・グループ展なんてものは大半が自己満足を満たす行為に過ぎないと言い切ってしまえば、Pixivフェスタも少なくとも当人達は好きでやっているようなムードは感じ取れたのでそれで良いじゃないかとも思います。ただ見に来た人に価値や発見を十分与えられるものであったか、ネットという垣根を越える事で新しいコミュニケーションを築けていたかと問うと甚だ疑問。今回はそのアリかナシかのナシの部分を書いていきます。

まずこのPixivフェスタについて簡単に解説しましょう。この企画はリアルでPixivを体感しようというコンセプトの基開催されたもので、A1サイズに印刷されたイラストに実際にシールを使ってタグや評価点をつけていき、それを通じてリアルでしか出来ないコミュニケーションをしましょうというというもの。

この考えからも分かる通り、これは始めからPixivというSNSを理解している事が前提の展示。そもそもは一人のユーザーの呼びかけに運営が乗って始まった話みたいだし、言うならばPixivユーザーのPixivユーザーによるPixivユーザーの為の公式オフ会ですね。前にも書いたとおり内輪の自己満足としてはこれで十分機能しています。

ただし冷静に考えてみると、この一々タグをつけて評価点をつけてコメントを付けて~という"Pixivならでわ"の一連の行為をリアルでやるというのは真にシュールなもので、余程Pixivに陶酔していてPixiv内共通言語でないとコミュニケーション出来ませんという人でもない限り、そのプロセスの面倒くささに嫌気がさすはず。

個展の良さというのは規模にもよりますが作家と観客の距離が近くなれるという点があると思うんですよ。特に今回のような小さなギャラリーでの展示なら、作家本人と対面出来る、話が出来るというのが良さとして確実にあるはず。僕の知り合いも自らの個展の時には有給取って可能な限り会場に出向いてお客とやり取りをしようとしていますし、それがコミュニケーションとしては健全なあり方です。

ところがPixivフェスタでは作家に合うことが出来ない。リアルでコミュニケーションと言いつつ本人が居ないわけです。一応名札をぶら下げた人が何人かうろついたので彼等が作家さんとお見受けしますが、それも総勢145名の参加メンバーの中、片手で数えてもそれすら満たない人数しか現場に来ていない。

それで一々シール貼ったりタグを付けたりコメントをつけたりを面倒くさいプロセスを経て行わなければいけない。しかもこれらの記録が作家に手渡されるのは展示が終わってかららしいので、実際にネットで一連の行為をやるよりも何倍も面倒臭く、何倍も時間が掛かる。それで時間と手間に見合ったリアルならでわの対価が得られるわけでもなし。何だか僕は逆に、これは現代のインターネット世代のコミュニケーション不全をコンセプチュアルに示しているのではないかとすら思ってしまったよ。

会場のお客さん達もその辺は察知していたのでしょう。人数自体はそこそこ入っているように見受けられましたが、それに対して展示の仕掛けが同じように盛り上がっているようには見えなかった。厳密には評価点を付けるのはシール一枚はがして貼り付けるだけなのでそれなりに行われているように見えましたが、それがタグ、コメントと順を追うごとに面倒臭くなるので量も比例して減っていく。それはネットでも同じではありますがやり取りする情報の絶対数が違うので、展示の方はあの量では満足行かないのではないか。

また作品の出力の仕方にも疑問を感じたなぁ。会場ではCGがA1サイズに大判出力されているのですが、幾ら大判と言ったってギャラリーに展示するサイズとしては大きい方じゃないし、大体この程度なら個人でも十分利用できる範囲のスケールだしで何にも驚きを感じませんでした。僕も一時A1、A0位で自分の作品の出力をやっていたんですよ。『さらばアメリカ』とか『失楽園2』とか。まぁくだらないものですよ。そもそもそのスケールやその紙質で印刷する事を想定して作っているわけでもないので、出来上がっても異質感しかないわけですね。

これはそのままPixivフェスタの作品全般に言える事で、わざわざあのような形態で見せる必然性を感じなかった。唯一三つ網の少女と老婆を描いた白背景の縦長の絵だけは紙の色と大きさを際立たせる構成に思えましたが、それも相対的に見たら良く見えただけであってベストな解とは思えない。

いやぁー課題が多いっすねぇ。次もまた開催されるかは分かりませんが、やるのであればこれらの問題に解答を示さない限りお客も作家もついてこないんじゃないの。こんな事する位だったら同人誌作って即売会で売るという従来型の活動の方がよっぽど実りある、そう思われてしまったら終わりでしょう。そうならないためには展示の形態を大きく見直さなければ。

僕としてはもっと商売臭い事やってしまっても良いと思うんですよ。Pixiv運営が取り仕切って出展作品のグッズ化と販売、または作家の別の活動の同人誌何かもその場で売れるようにしてしまう。もちろん作家本人もその場に居て直接意見交換ができる。更にはネットのPixivのサービスと同期し、全国のPixiv利用者が何らかの形で展示に参加できる仕組みを作る。webでの評価やタグ、会場でのコメント等が相互に反映し合えるようにしたりだとかアイディアは幾らでも沸くだろう。無料サービスでの実現が無理なら有料すれば良い。それに見合ったコンテンツを提供できれば良い話だから。今後予定されている有料サービスにイベント時の特権を与えるってのも悪くないんじゃないか。

まぁこれらは僕の勝手な妄想なので無視して結構ですが、要は何が言いたいかというと企画にPixivならでわの固有価値を自己満足に終始せず、実益が伴う形で実現しない事にはわざわざやる意味がないでしょうという事です。だって他にも活動できる場はあるわけですから。webの方ではそれら他の選択肢を駆逐しPixivの独裁形態を築けたのだから、リアルでもそれをやる位の気概を見せてください。どうせやるならね。

ただ最後に褒めておくと、同時に見に行った多摩美術大学グラフィックデザイン科の卒展よりかは面白かったよ。多摩グラの展示も問題点は似たり寄ったりだけど、Pixivの良いところは特別に美術の教養が無い人でも共通の機会が得られる事だから。今回の展示もそうだしね。そこには期待していますよ。

2009/03/01
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