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2009/03/08 - 塊めて始まり塊めて終わる


Xbox 360で『ビューティフル塊魂』をやっています。ちょっと前にiPhoneで『塊魂Mobile』をやってそれが良くできていたので、360版も手にとってみました。

成る程ね。微細なバランス調整が利いた紛う事なき和製ゲームだ。『THE iDOLM@STER』程ではありませんが、可愛い見た目して中身は結構骨のある難易度に仕上がっています。

ゲームのルールは至極簡単。ボールを転がして目前のあらゆるものを取り込んでいき、出来るだけ大きな塊を作り出していく、ほぼそれのみ。但し塊の大きさと取り込み可能な物の大きさは比例しているので、どういう手順で効率的に取り込んでいくかが戦略性の要になっており、更に時間制限と塊のコントロールのし辛さをどう克服していくかがこのゲームの面白さと言えるでしょう。

難易度は意外と高めで、適当に操作していてはとても各ステージの規定条件は達成できないバランス。恐らくステージ1周目は負け戦になるのは確実でしょうが、その代わり1ステージは6分程度と短いので何度もリトライしてマップの構造を覚えてベストのルートを導き出して、そしてミスなくそのルートを走破する事でクリアに繋げていく。つまりトライ&エラーって事ですね。このハードルをちょっと高めに調整して、程よいタイミングでそれを越えさせる調整は上手。

ところが本作のゲーム性はそれがほぼ全てで、逆に言うとそれ以外のゲーム的な起伏が貧しい作品なので、第一印象は良くてもその分飽きも早い印象。Xbox 360版の新要素らしい、指定されたタイプの物を積極的に取り組むというルールも、結局ステージの物を全部取り込む姿勢でいれば自然と指定された物が一番多く取り込めているようなっていて、これはあまりゲームの変化に貢献していない。

本作はそこでゲームの単調さを視覚的な魅力でフォローするという方向性に舵を切っており、その判断は間違っていないと思います。3Dは敢えて荒いポリゴンと質感の乏しいテクスチャに統一されており、所謂写実的グラフィックスとは別次元。その分デフォルメの利いたフォルムやパステルカラーの色彩の調和で魅せるようになっており、これが可愛らしくて中々愉快。

しかし本作のこの様式は元々は初代『塊魂』、つまりPS2世代の性能との掛け合いの中から生まれてきたもので、それこそPS2では驚きをもって迎えられたかもしれませんが、次世代機で単に解像度を高くしただけでは流石に手抜きにも見えてきてしまうかな。センス自体は否定しないけど、もう少し次世代機に見合ったリッチさを含ませても良いと思いました.。

さてここまで書くと既にお気づきの方も居るかもしれませんが、実は本作のデザインは『Mirror's Edge』とかなり近いと感じました。シンプルで修練を必要とするゲームデザイン、非リアルの方向性で映えるグラフィックスを作るなど、出来上がりは大分違うとはいえ作品が向いている方角は両者ともかなり近い。『Mirror's Edge』を楽しめた人ならば『塊魂』も同じように楽しめるかもしれません。

ただどっちが優れているかと問われたら僕は『Mirror's Edge』と断言します。本作と『Mirror's Edge』の違いは大きく分けて2点。ゲームデザインのシャープさと、プレイヤーへの即時強化性。

前者は字のままで、ルートをトレースしたり、より早いタイムを目指したりだとかいった、突き詰めていけば突き詰めていくほどシャープで正確さが求められてくるゲームプレイにおいて、ゲーム側がどれだけそれに見合った掘り下げ甲斐のあるシステムを提供できているかという事です。

『Mirror's Edge』の場合はストレスの無い洗練された操作性の他に、ステージ全体或いはチェックポイントごとのタイムが厳密に管理・閲覧できるようになっており、またトッププレイヤーのゴーストが表示されるなど、高みを目指したいプレイヤーの心理に合わせたインターフェイスが構築できています。

一方の『ビューティフル塊魂』はその辺がかなりアバウトで、まず操作性にやや難アリで厳密な操作をするのは難しい上に、ステージの結果の伝え方も曖昧。厳密な数字で示されるのは塊の大きさと総合得点位で、他に指定された物をどれだけ取り込めたかだとかの個別の統計は、「凄い」「普通」「残念」といった具合で非常に曖昧な表現で済まされてしまう。何処がどう連動して総合得点をはじき出しているのかという事がプレイヤーには一切分からず不親切です。これって『THE iDOLM@STER』の時もそうだったな。

次の即時強化性ですが、これはプレイヤーの行動がそのゲームで追求すべき方向に沿っているか否かをどれだけ分かりやすく伝えられているかという事。『Mirror's Edge』はそれは全てアクションの変化という1点に集約されていて、より早く効果的な進み方であればあるほど、それはよりスマートで格好良いアクションとして映るという相関関係が作れています。

対する『ビューティフル塊魂』は特別悪いってわけではないのですが、それでも流石に『Mirror's Edge』を一度体験した身としてはゲーム側からのレスポンスが貧しく、どうしても劣って見えてしまう。

この2点はいずれもインターフェイスデザインに起因する箇所で、本来ならそここそが日本の強みだったはずなのに、いつのまにか欧米に抜かれてしまっているのは危惧せざるを得ませんね。

それでも『塊魂』シリーズは和製ゲームにしては相当健闘していると思います。各レベルの視覚的デザインは日本というテーマに統一されて作られており、日本人だからこそ描けるデフォルメされながらも的を射た、日本人の原風景的描写は魅力的。BGMも国内のアーティストに任せていて、国内外問わず"日本のゲーム・日本のアーティスト"である事をアピールする作りになっている所は素直に褒めたいです。

プレイ動画。コントローラー操作ではSSが取れないので、コンソールはプレイ中はキャプチャした動画を垂れ流して後からワンシーンを切り取る方法を取ってます。

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