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2009/04/06 - やるドキュメンタリードラマ
引き続き『Grand Theft Auto IV』をプレイ中。相変わらず楽しくてかじりつくように遊んでいます。前回は雰囲気について触れましたが、今回も新たに色々と気づいた事を書いていきます。
本作では過去のシリーズ同様に非常に濃いキャラクター達が多数登場しますが、とりわけ終始ツルむ事になる従兄弟のRomanや友人兼仕事仲間のJacob、筋トレマニアのBrucie達が魅力的。勿論主人公のNicoも見逃せない。僕は前々回Nicoは押しが強くないみたいな事を書きましたがそれは完全な誤りで、ゲームをやればやるほど彼は一見無関心を装って口に出さないだけで、芯は一貫した考えや人格があり、ゲームもそれを強調している事に気づきました。彼等はメイン、サブミッションに関わらず、多くの場面でNicoと関わっていく事になり、またその度彼等の濃い人物像とそのやり取りを目の当たりにする事になります。
またそれをより際立たせるものとして重要な働きをしているのが携帯電話。前回の日記では取るに足らないなんて書いてしまいましたがそれもまた完全な誤りで、やればやるほど凄い物だと気づかされました。本作の携帯電話の効果は読んで字の如くそのまま携帯電話で、キャラクター達と離れた場所から意思疎通する事が可能。こちらからデートや仕事の約束をしたり、逆に向こうから掛かってくる事もある。
その中でも特徴的で面白いのがメインミッション中にも電話が掛かってくるパターン。大体一緒に遊ぼうと言われるので断る事になるのですが、そこでのやり取りがプレイヤーの感知しない所でも生きたキャラクターや生きた街があると感じさせる仕掛けになっています。
またこれらをリアリティあるものにする為の仕込みの量が半端じゃない。友達と一緒に遊びに行く時は勿論、携帯電話やPCのメールに至るまで本当に多種多様のやり取りが仕込まれており、ゲームっぽい同じやり取りの繰り返しを極力感じさせないようになっています。何せ一度クリアしたらそれっきりのメインミッションにおいても、リトライしてみると複数の会話パターンがある。
ただしこのような仕掛けは、一方では本来箱庭ゲームが売りにしていた自由度を制限してしまうと見る事も出来ます。主人公の我が強くなる事はプレイヤーとの不一致を意味し、キャラクターとの過剰なやり取りは作品の見え方から想像の余地を無くします。或いは携帯電話で呼び出し食らうという事は現実社会の様にスケジュールに振り回される事でもあります。
恐らく従来の『GTA』シリーズは、このゲーム側のプレイヤーに対する強要が嫌で意図的にそれを避けてきたのだと思います。だから今までは進行の主導権は常にプレイヤーに託されていたし、キャラクターもここまで押し付けがましくなかった。それがこのように変化したのは、つまり本作で今までのシリーズが保持してきた"自由"の定義から大きく転換したという事を指し示しています。
そもそもこれまでの流れの実質的な出発点となる『Grand Theft Auto III』では、プレイヤーキャラは完全無口で三人称なのを除けば典型的なGordon Freeman型のキャラクターでした。主人公の自己主張を一切無くす事で、ゲーム中での主人公の体験=プレイヤーの体験とする事が出来るという発想。それに基づきゲームのデザインもあくまでもプレイヤーの自主性を尊重し、ゲーム中の数々の仕込みもプレイヤーの創造性を喚起させるという方向性で作られていたように思います。
それが『Vice City』で基本は前作から受け継ぎつつも主人公に人格が備わり、『San Andreas』では生活シミュレーターの一面が出てきた。そして本作でリアリティの代償としてのゲームプレイの制限が大きく設けられ、一気に生活シミュレーターの色が濃くなりました。
その分生活を再現する為の仕込みの量と質は過去最高となり、その"膨大な仕込みをトレースして遊ぶ"という事が、『III』のような"自分で発想して遊ぶ"というデザインから取って代わっていると言えるでしょう。選択肢や掘り下げる余地が十二分にあるので従来と近い感覚で遊ぶ事が出来ますが、構造は大分違います。
だからゲームをしている時のモチベーションも、従来のようにタガを外して非道の限りを尽くしてやろうとは思わず、自然とゲームに設けられた制限に順応して、この仮想空間の雰囲気を満喫しようという気持ちになってきます。前回雰囲気が良いと書いた理由はこれですね。
そうしながらゲームに用意された膨大な仕込を1つ1つ埋めていき、その度に少しずつNicoや他のキャラクター達、ひいてはLiberty City像が厚みを増していく。それが本作のリアリティであり、従来のシリーズとの違いであり、一番の面白みなんだと思います。
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