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2009/06/03 - でんでんでんぐり返しでバイバイバイ


引き続き『Silent Hill: Homecoming』。多分もう中盤でしょうか。前回の記事ではケチョンケチョンに書きましたが、遊びこんでみるとコアの部分は比較的丁寧に作っており、言うほど酷くはないと感じてきました。

良い意味で一番驚いたのは、近年のゲームにしてはかなり難易度が高い事。敵が全体的に強めで戦闘はダメージ必至。その割に回復薬や弾薬は少なくチェックポイントは長めと厳しいバランスで、序盤でも平気で殺してきます。

しかし厳しいなりにバランスの舵取りは上手く、回復薬の量や出現タイミングは適切。新たな敵もテンポ良く登場し、同一タイプでも進むにつれより強力な攻撃をしてくる等気が利いています。面白いのが敵によっては即死攻撃を持っていて、これがプレイヤーが幾ら万全でも気が抜けないようにする仕掛けになっています。


そしてその肝心な戦闘もやり込んでみるとそこそこの出来なのも分かってきました。近接戦闘がメインで、敵の攻撃を読んでカウンターを入れていくのが基本的な攻略法。敵によってタイミングはバラバラで、更にナイフ、鉄パイプ、消化斧と取り回しと威力が違う得物のどれを使うかでも、戦い方が微妙に変わってくる。この敵の研究やテクニックの習熟が面白い。

一方銃器は相手を遠距離から攻撃できるので一見有利に見えますが、実際は相手の射程に入らないと狙えない急所を攻撃しないと殆ど無意味だったり、ヘッドショット以外は全て弾き返されてしまったりと必ずしも万能な武器ではない。この調整も上手い。

でも良く考えるとこのデザインは『Condemned: Criminal Origins』と丸っきり一緒なのが気になります。しかも『Condemned』の高度かつ大胆なデザインを触れた後では、どうにも本作は縮小再生産という印象が拭えない。高度なAIとの駆け引き、その場の廃材を拾って武器にする即興性と多様性、そういった『Condemned』の時には感じられた新規性が本作には皆無です。

元を正せばそもそも『Condemned』という作品は『Silent Hill』からの影響が相当強い作品だったわけですが、本作で立場が完全に逆転してしまっているのは何とも情けない話。ちなみに本作では鍵が掛けられていたり打ち板されたドアを専用の武器を使って突破する事ができますが、これもまた『Condemned』そのもの。幾ら何でも露骨すぎやしないか。必要性のあるシステムともは思えないし。


しかしそれでも美術が良ければ・・・アートワークが良ければ何とか行ける・・・!と思っていましたがこちらは更に振るわない。とにかく地味すぎる。全く華が無い。光源が禄に無い為どこも真っ暗でディテールを楽しむ余裕が無く、そもそもそのディテールも全く作りこまれていない。墓地、ホテル、警察署、下水道。どこも同じような風景、同じテクスチャやモデルが並べられた通路を延々と歩いている感覚。同じルートを何度も行き来する展開がそのイメージに拍車を掛けています。

また本シリーズ最大の見所であるはずの裏世界もまだ殆ど登場していないとは一体どういう事なんでしょう。最初のチュートリアルステージで1回出てきた他には、ボス戦の直前でもう一度切り替わったのみ。前者はまだ良いが後者は歩き回ったり観察する暇もないので全くつまらん。


多分物語の流れからして表裏の表現が比較的ソフトで、その分主人公の心情表現に力点を置いた『Silent Hill 2』を参考にしているのかと思いますが、もの悲しいのと殺風景なのとは全く別です。廃墟を用いて心情を描き出す事が出来ないならば、せめてより見た目の引きが強い裏世界を沢山見せてください。本作にはそういうサービス精神が著しく欠けています。

それでも敵のあの死肉のような青ざめた質感やボス戦のあの迫力を見ると、もっと出来そうな気もするんですけどねぇ。素材は申し分ないはずなのに開発のやる気が今ひとつで、どれもそこそこかそれ以下の出来に留まってしまっているという印象です。


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