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2009/06/06 - Shall we dance ?


皆さんは『Stalin vs. Martians』をご存知でしょうか。スターリン率いるソ連が火星人と戦うというぶっ飛んだ設定と共に、そのプロモーションの珍妙さから極々一部のゲームフリークスの間で密かに話題になっていたロシア発の作品。発売後も酷評に晒されてMetascoreで歴代ワースト8を獲得する等快進撃が続いている本作ですが、最近Steamでも売り出されているのを発見して思い切って購入してしまいました。

ゲームの舞台は1942年のロシア。第二次世界大戦真っ只中のこの年の夏、シベリアに着陸した火星人達が突如としてロシアを攻撃し始める。この非常事態に時の権力者スターリンは、自らの直接指揮のもと極秘裏に火星人撃退作戦を敢行。これは決して表の歴史では語られる事のない、もう1つの第二次世界大戦史である、というストーリー。

そもそもの発端は今年3月頭の発売発表にまで遡ります。そこで公開された上記の背景設定はそれだけでも十分な破壊力でしたが、作品の印象を決定付けたのは同時に公開されたTrailerの方でしょう。


インゲームの映像と共にかのスターリンが踊り狂う様は、あまりにも意味不明かつ珍妙で、発売前の時点でヤケクソになったか或いはキツイもの一発キメて作ったとしか思えません。その後も今度は実写の女性が踊ったり、エイリアンがハードロックを歌うTrailerが縦続きに公開され、ゲーマーを更なる困惑の渦に陥れていきます。



こうして4月末の発売を迎えた後は、破綻したゲームバランスや陳腐なグラフィックス、笑えないジョーク、バグの嵐等など厳しい評価を下され、仕舞いにはMetascoreで23点で歴代PCゲームではワースト8を獲得。しかしGamespotのUser Reviewを見ると、酷評の中にも10点満点付けている人達が散見され、波長が合う人にとってはたまらないゲームになっているとも言えるようです。

ずいぶん前置きが長くなってしまいましたが、僕も購入して触ってみてある意味感動。発売前のTrailerにも劣らないハメの外しっぷりで、ゲームそのものが冗談の塊と言っても良い。何はともあれ論より証拠という事で、実際の画像を交えて見ていきましょう。

オープニングにソ連国旗と共に国歌がフルで流される。斉唱して心を清めてからゲームに挑もう。

チープなメニュー画面。またGame of the Year Editionとあるが全くのデタラメである。

オプション画面はたったこれだけ!「革命家スタイル」と「オーソドックス」の二種類に切り替えられるキーレイアウト、「Do you like cats? Yes!/No!」等意味不明な項目が画面を踊る。

ローディング中は何と間違い探しが出来るぞ!これなら待ち時間が長くてもへっちゃらだね!

火星からの侵略者に立ち向かうのは我らがスターリンを率いるロシア軍。

ロシアの大地を揺るがす侵略者達はピクミン似であった。チューチュー言ってウロチョロするウザい奴らだ。

同じくもう一種の侵略者はトイストーリーのリトル・グリーン・メン似だった。しかしあちらのような可愛らしさは微塵もなく、目玉はなんだか蓮コラみたいで気持ち悪い。

ミッションをクリアするとスターリンに褒めてもらえます。

これらを映像にするとこうなります。

ゲームの内容はRTSの様式を基調としていますが、このジャンルの必要要素であるリソース収集や生産の概念をバッサリ削除。代わりに敵を倒すと落とすコインを拾うことで、ユニットを購入する金や体力の回復、攻撃力や防御力の強化をする事ができます。

ただし金以外の回復や各種強化はそれを拾ったユニット単体にしか適応されないため、乱戦状態の中意識して強化していくことは不可能。開発者もそれを知ってか、ユニット強化の破綻を補うかのように金が大量に手に入るようになっており、それでユニットを湯水の如く増産して総体の火力を上げていくバランスになっています。

最終的にこれだけの大軍になります。

ゲームの進行は敵を蹴散らして目的地に進んでいくのみの超単純な内容ながら、操作性まで不便な位に簡素でユニットを効果的に操るのが難しい。まずキーバインドが皆無で、指定地に移動、ホールドポジション、攻撃、キャンセルなどのアクションはHUD下部にあるボタンを一々押して操作しなければいけません。これに更に大量のユニット、不出来なパス設定によるユニットのスタック等の問題が重なってくるといよいよ精密な操作は出来なくなり、結局大軍を前方に突っ込ませるだけのゲームになってしまっています。

戦闘は敵に近づくと半分自動で行われますが、積極的に戦ってくれないので、自分でどの敵に攻撃するか指定していく必要性があります。敵はやたらと大量に出てくるでゲーム中はとにかく忙しくマウスをクリックしまくっている印象。

そして最も致命的なのがゲームの難易度が無茶苦茶な事。基本的には簡単なのですが、所々極端に難しすぎる箇所があって明らかにテストプレイしていない。特にステージ2が今のところ最もキツく、いくらユニットを大量にこさえても敵がほぼ一撃で破壊してくる。その割には二手に分かれて挟み撃ちといった気の利いた操作が出来る内容ではないので、全滅覚悟で突っ込んで必死に金を集めてユニットを再生産してまた突っ込んでの繰り返し。それでもうお金はゼロ、ユニットは戦車1台というギリギリの状態で何とかクリア出来ました・・・ 

個人的に幾らクソでつまらなくても難易度が高くなければ遊べるものなのですが、難しくてクソってのが一番あってはならないパターン。って言っていたら次のステージ3はステージ1以上に簡単で拍子抜け。本当何も考えていないって感じで眩暈がしてくる。

総合的に見てあらゆる点で完成度が論外のレベルで、この作品のユーモアとジョークがツボにはまる人以外には全く薦められないゲーム。大手のレビューサイトの点数も妥当だと思います。ただそれでも僕はかなり好きだなこういうの。昔日のB級ゲームの香りがして懐かしい気分にも浸れます。

ただ最後にジョークだとか抜きに1点だけ褒めておくと、音楽はこの手のゲームにしては存外に良く出来ています。HPを見るとロシアを中心としたアーティスト達が関わっているらしくて納得。特にANJは『Gorbacev』って曲で結構有名なんじゃないか?って思っていたらまんまその曲で参加していました。確かにこの作品のイメージにはピッタリだわな。


『Gorbacev』以外にも本作の楽曲は全てゲームのインストールフォルダにogg形式で保存されているので、対応プレイヤーで聴くことが出来ます。

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