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2009/07/14 - Pixiv村の文化祭


PixivフェスタVol.2全日程終了。当日来て下さった方は本当に有難う御座いました。そして関係者各位は大変お疲れ様でした。僕自身も殆ど不眠不休の中で挑んだイベントだったので、後半はかなりヘロヘロでした。ほぼ同じタイミングで会田さんの仕事も一応区切りがついたので、やっと平穏な日常に戻れそう。何て毎回同じ台詞吐いている気がしますが、適度に羽を休めてまた次の活動に挑んで行きたいです。

それで今回は告知通りPixivフェスタVol.2のレポートをする事にしましょう。結構長くなりそうので感想を二つに分ける事にし、出展した本作『Big Father』や僕自身にまつわる話は後編に譲って、今回はフェスタの総合的な感想について述べていきたいと思います。

まず第一に基本的な部分は、結局前回のフェスタの時の感想と全く変わらず。これは企画内容が全く変わっていなかった所から半分は想像していた事ですが、本当に当日も殆ど変化がなかった。

但し二度目のイベントである分、回数を重ねただけの濃度は確実に上がっていた。具体的に言うと出展作品は前回の様子を踏まえてなのか全体的に高密度なものが増え、皆それなりに手慣れた印象を受けました。また出展した作家本人も全日程通して見るとかなりの人が会場に来ていて、作家間のコミュニケーションも前回以上に活発でした。

その点に於いては今回の大筋の参加者の満足度は前回以上だったのかもしれない。しかしそれは前回僕が感想で書いた"自己満足"が向上しただけの事。自己満足は何処まで行っても自己満足に過ぎず、寧ろその密度が上がった分、それにより併発される問題点の密度もまた上がってしまっています。

その問題点とは一言にして"第三者に開かれていない"という点に尽きるでしょう。当事者間による盛り上がりは、逆に第三者にとっては入り込む余地の無い排他的な環境に映る。

今回も実施されたリアル評価、リアルタグ、リアルコメントは、Pixivを知らない人にとっては全く意味不明の儀式めいたものに感じられ、会場に設置されたテーブルは参加者やその友人が占拠し、脇目も振らずノートの見せ合いっこ描き合いっこに興じていた。中には当日発売された『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』を遊んでいる人も。コメントノートもその殆どが仲間内や知り合いによる書き込みに終始してばかり。

加えて環境設備の最悪さも当事者以外観るに耐えないものにしている原因。まず会場となったデザイン・フェスタ・ギャラリー EASTがギャラリーとして最低レベル。普通のアパートを改造した内装は狭い上に天井の高さがバラバラ。壁は釘穴を埋める事もせず痛みっぱなし。照明も位置がメチャクチャで光が過剰に当たり過ぎている作品もあれば全く当たっていないものもあり、どちらにせよ作品の印象を大きく損なわせてしまっている。

そして極めつけは展示作品の印刷の質の悪さ。全体的に色が暗い上にコントラストも低く、暗い色を多用した作品は総じて黒ずんでしまい、ディテールの確認もままならない状態でした。これは僕がたまに友人に使わせてもらっている家庭用大判プリンターの画質と殆ど同じ。参加者が最終的に出力される状態を想定せずに描いたのも原因として幾分あると思いますが、僕がポートフォリオ用に自宅のプリンターで印刷したものは問題なかったため、恐らく出力時の問題でしょう。もし何らかの形で参加者が最終的な仕上がりを想定できる機会があれば話は変わってくるのでしょうが、今回それは叶わなかった。

以上のように鑑賞者にとって心理的、空間的に入り込める場所がなく、また作品そのものの質も悪いようでは展覧会として最低、失格レベルと言わざるを得ません。参加者が元々オタク気質な人達なので、何もコントロールしなければ自然とコミケやその他即売会に似た排他的、村社会的コミュニティと化すのは自然の理なのかもしれません。またそうなるであろうという事に対し何ら対応をしていないPixivフェスタの運営側は、本当に何も考えていないか、もしくはこれで十分だと思っているのでしょう。そう考えるとこの規模の展覧会としては例外的な入場料500円というのは、場にそぐわない人物が間違って訪れるのを防止するための唯一の良心なのかもしれない。

しかしだとしたらお金を払ってまで観に来てくれた人達の立場はどうなるのか。知り合いが居るわけでもなく、単純に作品を観たいという欲求から来られた人達に対しどう申し訳をするのか。金払ってまで観に来たんだから後は自己責任?それはおごりである。自分たちにそんな事できるわけがない?それは甘えである。何時如何なる場合でも、作品を誰か他者に観てもらう以上、作家は鑑賞者に対し能動的に感動を与える責任があり、そしてそれに見合った評価を受け取る権利がある。それが作家と鑑賞者の真っ当な関係です。

それが嫌なら、お互いコメント書きあって慰め合い、溢れかえった人達を見て鑑賞されたという気分に浸りたいだけなら、展示なんてしてはいけない。自己を満足させるためだけに他者を犠牲にするな。それなら展示後の打ち上げだけで十分。そこでポートフォリオ持参してお互い見せ合いっこするオフ会に留めればいい。それなら誰も損をしない。

確かに趣味を共にする者と会ってお喋りするのは楽しい。次もまたあの人に会ってお喋りしたいとも思うでしょう。その気持ちが絵を描く上でのモチベーションにもなる。それは今回僕も参加したことでハッキリとわかる。しかしそれは本来絵を観てもらい評価を受けるという目的を達成するための手段としてあるもの。それが逆転し馴れ合うのが目的で、それを達成する手段として絵を描くという在り方になるのは大変危険。作家たるもの常に自らの作品によって自分の世界の外へ広がっていこうとする姿勢、新しいものを受け止める姿勢が必要です。

そんな事嫌だとかそんな事したら今の居心地の良さが無くなるという考えは前述したとおり甘えです。あなた達が夢中になって止まない『新世紀エヴァンゲリオン』を見てご覧なさい。あれは我々オタクを瞬く間に虜にした。そしてそれはオタクの外の世界にも波及していった。我々はそれを知っていて、今も尚それを心の奥底で求めているからこそ新劇場版に期待を寄せるのではないのか。

我々がPixivフェスタで求めた楽しさと、心の奥底では求めている外へ広がり新しいもの受け止めたい気持ちは両立できる。ならばその地点を目指して欲しい。僕は目指したい。Pixivもそうであって欲しいと思っている。現状に甘んじ、その維持の為に他者を犠牲にするのではなく。

今回こうして書いたのは僕自身への自戒も込めての事。それについては次のエントリーに続きます。


2009/07/14
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