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2009/07/21 - ガラパゴスからやってきた


久しぶりのゲームの日記です。ようやく『NecroVisioN』クリア。途中間が空いてしまったのもあるのですが、それを抜きにしても最近のゲームとしては結構ボリュームがありましたね。途中シークレット回収の為何度かリプレイしたので大体18時間位は遊んだのかな。

近年舞台設定のリアル化、硬直化が進んでいる中で、昔懐かしいダーク&シリアス、オカルトファンタジーを最後まで貫き通したのは素晴らしい。しかしかといって本作はそんな懐古趣味に訴えかけるデザインというわけでもなく、どちらかというと2000~2002年以降の一切のFPSにおけるトレンドに触れぬまま、独自の進化を遂げたかのような異質感というか時代錯誤感を感じる作品と表す方が的確かもしれません。

と言うのも本気でノスタルジーを作品の魅力にしようと思うのなら、『Painkiller』のように細かい要素を一切省いた、正に過去へのオマージュに徹した方が良い。その方が作品のスタンスが分かりやすく、また今の困窮したPCゲーム市場のニーズにも合致するはずです。

ところが本作は"大量の敵と戦いあう"という大局的なコンセプトは過去のFPSと一致しているものの、その具体的な実践は今まで何度も触れてきたコンボシステムという、かなり異質な方法を採っている。更に大量の敵を相手するにも関わらず、コンボの発動条件の大半が接近戦を交えることを必須とするデザインな為、総じて敵に360度囲まれて身動き取れない状況に陥り易く、ともすればやみくもに手を振り回してゴリ押しするかのような、がさつな操作に陥りがちです。

本作の最も大きな問題点はそこにあると言えるでしょう。上記の様なカオスに陥らずプレイヤーのパーソナリティーを確保するにはかなりの慣れが必要。この点は中盤でShadow Handを手に入れて中距離攻撃が可能になる事である程度中和されますが、それでも基本的なノリは変わりません。

また更に悪いのはインターフェイスデザインもまた昔のFPSのように全く練れていない点で、その不便さが繊細な操作の障害になっています。本作では手に入る武器がとても多いので、『Half-Life』のように武器の特性に応じて大きくカテゴリー分けされた後、そのカテゴリーの中から個別に武器を選択するシステムを採用しています。その為マウスホイールでの選択は非常に非効率的で、またキーバインドからの操作も、例えば近接武器のカテゴリーの中の8番目の武器を選択したい場合はキーを8回押さなければいけない。そしてもし間違って通り過ぎてしまったら、また8回押しなおさなければいけない。

またShadow Handを手に入れてからはそれが輪に掛けて酷くなり、以降手に入る火器は特性が違うのにも関わらず、全てShadow Handカテゴリーにまとめてぶち込まれてしまう。一方お役目御免となったそれまでの武器は、全く使われる事が無いのに武器スロットだけは無駄に占有し続ける始末。他に沢山の無用なスロットがあるのに、たった1つのキーで大量の武器をやりくりする馬鹿馬鹿しさ。『Painkiller』の時異なる武器を1つにまとめて武器スロットを軽量化したような知恵は一体何処へ消えた。

以上の様な猥雑さが、始めに書いた異質感や時代錯誤感に繋がっていると言えるでしょう。もう今の時代では解決された過去のゲームデザインの問題点をそのまま引き摺っている。しかし逆に言うと、時代の流れで淘汰されていった過去のゲームデザインのトレンドを、そのまま発展させたかのような面白さを味わえるのも事実です。

先ほどネガティブに書いたコンボシステムも、プレイヤー自身のパーソナリティを確保できるようになるまで慣れてくれば、面白い要素として機能するようになります。接近戦を用いない事も含めた色々なコンボを熟知し、大量の敵を圧倒していくのが面白く、懐かしさと目新しさが綯交ぜになった独特の魅力があります。

大量の武器もまた同様。インターフェイスの駄目さ加減を抜きにして語れば、多くの武器を扱えるというのはそれだけでも少ない所持武器の中でやりくりする近年のFPSには無い面白さがある。特にコンボシステムと絡む事でより多彩な戦法を生み出す事に繋がっている等、それぞれが引き立てあうように作用しています。

また東欧ゲームとしては素晴らしく展開のバリエーションが豊かなのも特筆に値する点でしょう。東欧ゲームは大体皆だらだらと同じ様な展開が続き、サービス精神何て微塵も無いという印象がありますが、本作は違う。何度も触れてきた中盤のShadow Handによるゲーム性の一新の他にも、見た目内容共にステージごとの差別化が行われており、時にはロボットやドラゴンに乗って戦うシーン、そして『Painkiller』以来のお約束である巨大ボス戦も適度に挟まれる等、兎に角プレイヤーを飽きさせない配慮が随所に施されています。こういった意匠は東欧ゲームの中では大変貴重で、素直に偉いと言いたい。


その他の点ではグラフィックスの質も上々。技術的な目新しさはありませんが、一つ一つの効果の使い方が上手く、また技術とは別にアーキテクチャの質がすこぶる良い。昔日のFPSの様式美を倣いつつ、独自の世界観を構築できています。そこはやはり『Painkiller』を作った作ったセンスがそのまま活かされていますね。東欧のゲームの中ではトップクラスと言っても差し支えないでしょう。


まとめると、時代錯誤でそれ故の問題点もあるが、逆に時代錯誤なりにはしっかり作ってあるという事ですね。まるで最近のゲームには一切触れず、昔の感覚で言うところの"新しいゲーム"をそのまま形にしたかのような、1人進化の系譜から外れた正にガラパゴスのようなゲームです。

その為とっつき難さ、あくの強さ、偏屈さはかなりのもので、広く他人にお薦めできる作品ではありません。しかし今まで書いてきた事を踏まえられるなら、手にとってみるのも悪くないかもしれません。中々に独特な感覚を味わえるはずです。

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