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2009/07/29 - 充実した時間をすごす為には
引き続き『Mass Effect』です。プレイ時間はかれこれ既に35時間以上。一見ボリュームがあるように見えますが、メインクエストはかなり早いテンポで進んで行くので、多分この調子だとメインのみなら15時間以下でクリア出来てしまうのではないでしょうか。後の時間は全てサブクエストで、真面目にやり込むと本作のプレイ時間の半分以上はサブに費やす事になります。
メインクエストは見た目、内容共に最近のTPSに近いノリで進んで行き、前回書いた戦闘量が少ないというイメージは払拭されました。演出もそこそこ気が利いているし、メインの出来に関しては及第点があげられると思います。が、問題なのはそれ以外の要素の方で、一言にして退屈です。
本作のサブクエストは幾つか種類がありますが、その中でも多くの割合を占めて尚且つ最も退屈なのが惑星探索と呼ばれるタイプのクエスト。惑星探索とは文字通り銀河に散らばる惑星にそれぞれ着陸して、専用の車両を駆って探索するというもの。点在するアーティファクトを探して回ったり、或いはたまにどこそこの星に敵の拠点があるから征圧しろみたいな依頼を請け負うパターンのものもあります。
しかしここで問題となるのがクエストの捻りの無さ。まず各惑星のレベルデザインが最悪で、それぞれ空の雰囲気とテクスチャと形状が若干違うだけで、どれもただ頂点を引っ張って作っただけのような適当な地形に終始し、後は何パターンか種類があるアーティファクトが1つの惑星に対し4、5個の割合で点在しているのみ。そしてそのマップが質量の割には無駄に広いので、それぞれのアーティファクトを廻っていくのに時間だけがやたらとかかる。
退屈なのはダンジョンに潜ってからも同じで、これも5パターンくらいのものが使いまわしされているのみ。つまり手抜きなんですよ。それはもうメインクエストと比べると見るも無残な位の落差がある。恐らくメインのみだと今日のRPGのトレンドに合わないので無理やりにでも自由度っぽいものが欲しかったのか、それとも単にプレイ時間が少ないのを誤魔化したかったのか。でもいずれにしても水増しであることには変わりないですよね。こんな出来損ない作るくらいだったら、その分メインクエストの作りこみに磨きを掛けた方がよっぽど印象が良いと思うんですが。
またこれは更に突き詰めると"時間対効果の充実"という問題にも関わってきます。同じ時間でもどれだけ有意義で密度ある体験が出来るか。この観点で見ていくと惑星探索における冗長過ぎる移動時間に限らず、他にも幾つも気になる点が思い浮かんできます。例えばコーデックスを読んでいるだけの時間だとか、会話をしているだけの時間、装備を確認しているだけの時間、或いは頻繁に挟まれるローディングなど等何かと退屈に感じてしまう機会が多い。
別の言い方をすると、もっと"やりながら"出来る事があるんじゃないかと思うんですね。コーデックスを読んでいる間は他一切のゲームの要素が中断されたかと思うと、一方では何も無い荒野をただ延々と移動しているだけの場面もある。もしこれらを組み合わせて移動している間やローディングの最中にコーデックスの内容を理解したり会話を進める事が出来るようになっていれば、それで一気に時間対効果が改善されるのではないでしょうか。
このように本作は時間の使い方に工夫がなっておらず、要素がどれも単発的で非効率的。本作が発売された2007年のゲームにはこれらへの意識の高い作品が多かっただけに、余計時代遅れに見えてしまう。
今回もまた話題が少々ずれますが、その意識が高かった作品として幾つか例を挙げてみると、まず筆頭にあがるのは『Call of Duty 4: Modern
Warfare』。この作品ではローディングがブリーフィングの代わりとなっているのですが、今までその手のものはせいぜい一枚絵がポツポツと出る程度だったのに対し、恐らく初めてフルアニメーションの動画を流したという所が凄い。ローディング中にあの解像度の映像を流す技術力も然ることながら、もっと凄いのはその映像自体がセンスが良くて格好良いという点。
実はローディング自体は映像半ばで既に完了してしまっているのが大半なのですが、それでも飛ばさずに続きを見たいと思わせる程の強度があの映像にはある。格好良い映像によってローディングを退屈な時間から一転して楽しみな時間に変えてしまう。"時間対効果の充実"という問題で、これ程わかりやすい例はありません。
もう1つ同じ方法論を活用した他の作品としては『The Darkness』も忘れてはなりません。元々このゲームを開発したStarBreezeというスタジオ自体、やたらとローディングが早いという印象があるのですが、本作では更にローディングの度に主人公の独白が入るという点が特徴的。またそれも単なる使い回しではなく、ストーリーの進行に連動した形になっていて、その状況における主人公の見解が殆ど唯一聞ける機会となっている事で、演出の必然性が増しています。
また準フリーローミングなゲームスタイルで、マップ移動の度にローディングが入るという点では『Mass Effect』と共通する部分も少なくありません。しかし『Mass
Effect』はただエレベーターに乗っているだけ、変哲もないローディング画面が映るだけと捻りも何もありませんでしたが、『The Darkness』は主人公の独白自体が切実さとユーモアを併せ持った中々味わい深いものになっているので苦痛に感じません。やはりローディングを退屈に感じさせたくないのであれば、そのものに価値や魅力を持たせる事が重要なのでしょう。
しかし『Mass Effect』の問題点を考える上で最も参考になるのはやはり『Grand Theft Auto IV』に他なりません。この作品は発売は2008年なので厳密には2007年のものと並べて語るのは公平じゃないのですが、しかし『Mass
Effect』の問題点に多くの解法を示唆している作品である事も事実です。
本作でまず真っ先に見習うべき点は完全なノンローディングを実現できている点でしょう。ゲームを始める時のちょっとしたローディングを除けば後は全てストリーミングで読み込まれる快適さ。問題点そのものを潰すというのは少々荒っぽいですが、やはり行動の自由度を謳う作品であればせめてローディングの存在を殆ど感じさせない位のレベルまで作りこんで然るべきです。
そして更に重要なのが時間を出来る限り有効的に使い飽きを感じさせないようにしているきめの細かさと抜け目のなさ。例えば本作ではメインサブ関わらず誰かと一緒に行動する場合は、移動の最中に絶えずそのキャラクターと会話をしていく事になります。内容は一見他愛のないものですが、それらの集積によってそのキャラクターや主人公の人物像や世界観が浮き彫りになっていく点は、正に『Mass
Effect』における会話とコーデックスの役割を同時に果たしていると言えましょう。またそれを移動という通常中だるみする時間に行う事で、それを有意義な時間へと変化させている。その会話自体ユーモア豊かで聞いているだけでも面白いのは最早当然の事。
またこれは単に能率性や時間対効果の問題だけに留まらず、より深層のストーリーの魅力や没入感にも作用してきます。『Grand Theft Auto
IV』の場合は仲間と仕事をしたり遊んでいる時に色々な話を聞く事で、それが単なるただの会話から、その行動やその空間の中での会話といった、プレイヤーにとってより具体的で真実味のある体験になります。あの時ああいう風景でああいう出来事の中で、あいつとああいう話をした。それぞれの会話パートだとか戦闘パートだとかいった区切りをなくす事で、統一された体験として、言い方を変えると"思い出"としてプレイヤーに認知させる。時間対効果を突き詰める事とは詰まるところプレイヤーを現実に帰す隙を作らない、転じてより深いレベルで没入させる事にあり、『Grand
Thefft Auto IV』がやっている事は、正にその核心を突いていると言えるでしょう。
このストーリーを"思い出"にしようという意識は『Mass Effect』にも全く感じられないわけではありません。例えばメインクエストが終わった後に仲間に話しかけると、そのクエストの感想と共にその仲間個人のバックグラウンドに関する話をしてくれるし、メインクエストに同伴させたか否かで有効度が上下し会話内容も変わってくる。そしてそれがゲーム後半で生かすか見殺すかの選択に関わって来る等、一見して『Grand
Theft Auto IV』とやっている事は一緒のようにも思えます。
しかし要素がシームレスに絡み合っていた『Grand Theft Auto IV』と違い、『Mass Effect』はバラバラに分離していて如何にもゲーム的な嘘や違和感留まりなのが明暗の別れどころでしょう。行動を共にすれば仲良くなると言ってもそれはとても機械的な判定で、クエスト中は殆ど会話という会話をせず、次のクエストまでの待機中の間だけ会話をして、そこで親密になったならないのドラマが行われるのは極めて不自然でピンと来ない。つまりゲーム中の出来事とプレイヤーの心境が一致しないのです。
前にも書いた様に『Mass Effect』は個々の要素だけ切り出してみれば決して悪いところばかりではありません。しかしそれぞれをやる時にはそれのみを強いるデザインなのが間違いなのです。ゲームによって本気で没入感や感動を生もうとするならば、戦闘や会話等の個々の要素を高める以外にも、それらを繋ぐ上で生じてくるあらゆるゲーム的な繋ぎ目を廃し、時間的にも空間的にも体験的にも統一された世界を作らなければなりません。そこを強く意識し実現できているかどうかが、超一流とそれ以下のゲームの違いだと思います。
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