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2009/08/23 - ロシア様で御座いますか?


『Wolfenstein』が届いたので『Prince of Persia』は少しお休みしてこちらをプレイ開始。あの『Return to Castle Wolfenstein』の続編で、Raven Softwareの新作という事で結構期待されていましたが、発売後のメディアの評価を見ると見事ずっこけたって感じですねぇ。

実際僕も遊んでいますが、舞台設定やゲーム性やグラフィックス等など、全てにおいて古臭い。トレンドを追えば良いってわけじゃないけれど、こうも前時代的な感覚のゲームを大作という立場で2009年に出すというのは時代錯誤も甚だしいのではないか。

ゲームデザインはRavenらしいと言えばらしい、非常にオーソドックスなシューティング。本作の特徴として挙げられる特殊能力はバレットタイムを筆頭にした定番能力の総集編って感じで目新しさは感じないし、フリーローミング要素もクリアしていくミッションの順番を選べて、後は拠点となる大きめの町のマップでランダムに戦闘が発生する程度の簡素なもの。

そうした事から多少要素が追加されたとはいえ基本部分は『Quake 4』に毛が生えたような感じで、その『Quake 4』ですら発売された05年の時点で相当古典的なデザインだと言われていたわけですから、更に4年経った現代でも尚変わってないとなると、最早カビが生えてきているんじゃないかと思ってしまうくらいに古臭い。

特に最近は『Call of Duty 4: Modern Warfare』の影響を受けて猫も杓子もレールライドシューティング化状態。勿論それが全面的に正しいというわけではありませんが、そういう流れの中から感じる、シューティングも含めたゲーム内の全ての事象を統一した体験としてパッケージングしていくという方向性は、とても高度というか現代的で面白いと思っているし、また僕が個人的に最前線のゲームに強く求めている要素でもあるわけですね。

そういう観点で見ると、本作はフォーカスを当てているのがシューティングの一点ばかりで、そこから生じる様々なゲーム的な嘘に対しては全く無頓着。そういう視野の狭さが如何にも『Call of Duty 4: Modern Warfare』、もっと遡ると『Half-Life 2』以前のデザイン論って感じでやはり古臭い以外の何物でもない。

加えて『Doom 3』のTech 4 Engineの粗いポリゴンに粗いアニメーションにスペキュラマップ剥き出しのグラフィックスは、技術的にもセンス的にも前時代的で、本作のリアリティの無さや感覚の古さを裏付けてしまっている様にも見えます。


以上の様に欧米の大作ゲームとして見ると、必要条件を満たしておらずとても褒められた出来とは言えません。そう言うわけで開始3時間位でこれはもう駄目だと見限りそうになったのですが、しかし着眼点を変えて見ると、本作の方向性やセンスは寧ろロシア製のB級ゲームに近いんじゃないかと思えてきました。

僕がそう感じる理由は幾つかありますが、最も大きいのはロシア圏のFPSには本作の様なオカルトものや秘密研究ものの舞台設定がやたら多いという事。と言うかそのオカルトもの自体、直接的なルーツは何を隠そう本作の前作である『Return to Catsle Wolfenstein』にある訳で、欧米がどちらかというと『Medal of Honor: Allied Assalt』や、それに続く『Call of Duty』をルーツにしてその後順当に進化してきた中、対する東欧は未だ『Return to Catsle Wolfenstein』の流れを汲んだまま今日に至っている。

ざっと例を挙げると『Uber Soldier』はモロにナチスのスーパーソルジャーがテーマだし、『NecroVisioN』は第一次世界大戦に吸血鬼のオカルトパワーをミックス。『Time Shift』は悪の科学者が1939年までワープして非道の限りを尽くす話で、『You are Empty』は1950年初頭のソビエトでの同じく超人実験をテーマにしたもの。こうした中、本作はオカルト花盛りの『Return to Catsle Wolfenstein』のフォロワー達を、まるで逆輸入するかのように参考にして作られたのではないか。

またそう考えれば本作の様々な特性も説明が付け易い。例えばまず本作のような欧米では最早化石化しているシューティング一点張りのゲームデザインもロシア圏では未だ全盛だし、最新技術やキャラクター造形やストーリー演出は疎い代わりに、不気味で独特な雰囲気があるグラフィックスも共通している。他の大戦系ゲームでは重要視されていないプロパガンダポスターがやたらと多用されている所なんて正にそれそのもの。何だか寧ろ東欧の開発者に作らせているんじゃないのかってくらい感性が一致していて、そしてその観点で見るならば、ゲームデザインにはある種の一貫性があるし、どの要素もツボを押さえているし、完成度はとても高い。

こういう光景、ロシアゲーの中で見覚えありませんか?

これを書いていて思い出しましたが、そう言えばRavenが本作と同時開発している『Singularity』は舞台がロシアと本作以上に直球ストレートで、今回の僕の指摘もあながち的外れではないかもしれない。ここまで要素が揃っているとロシア圏のスタッフが関与しているとしか思えず、それこそ『Time Shift』の開発陣を引き入れたりしてるのではないか?いや、全くの憶測ですが。


ただ問題はどうしてこうなった?って事で、B級ゲーは全然いける僕ではあるけども、Ravenがこうなってしまったのはどうしても解せない。元々マルチプラットフォームとは程遠い硬派で昔気質なPCゲームを作る所でしたが、そうしたPCゲームとしてのメンタリティを保つ為にはロシアゲーに靡くしかなかったのか。謎は深まるばかりですが、どちらにせよ今までのRavenのファンはがっかりする内容には違いないでしょうね。

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