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2009/09/04 - 『Assassin's Creed』の出涸らし


『Wolfenstein』が途中でクラッシュするバグに遭遇してお預け。という事で『Prince of Persia』を再開。そしてクリア。うーん、結局良いところも悪いところもUbi Montrealらしい作品でした。見た目の引きの強さと言うか見せることに対する仕事っぷりは毎度のように超一流。一方ゲームの内容は簡単・単調の極みで二流以下。

但しそれでも『Assassin's Creed』や『Far Cry 2』は失敗していながらも、次世代のゲームデザインの開拓という大義名分があった分厚みがありました。しかし本作の場合は『Assassin's Creed』の功罪を殆どそのまま引き摺っているも当然で、尚且つ次世代志向の『Assassin' Creed』に対して本作は従来路線という消極的なスタンスをとっており、それが印象をより薄っぺらいものにしてしまっています。

ゲームの展開は前のエントリーに書いたとおり、ダンジョン攻略、ボス戦、探索のセットの繰り返し。ここでの問題点は大きく分けて二つあって、まず一つは同じリズムで繰り返しが延々と続いていく事による単調さ。普通ゲームってのはなるべく繰り返しを感じさせないように変化をつけていくのが一般的で、特に最近では従来のゲーム的なロジックすら解体して全て一繋がり体験として描いていく様になって来ています。ところが本作は難易度の上昇だとか新たなギミックの追加だとかいった単調さへの対策が殆どないまま、ゲームの始まりから終わりまでまるで心電図の様にずっと同じテンポで進んでいく。

そしてもう一つの問題点はそれぞれの段階それ自体が面白くないという事。例えばダンジョン攻略や探索のパートで行うアスレチックアクションの場合では、間合いや位置の制御だとかいった今までのこの手のジャンルでは煩わしかった部分が全て自動制御されているのは前に書いた通り。しかしこの煩わしさは同時に面白さにも繋がっていたわけで、それが取り払われた本作では単に二、三のボタンを押しているだけで済んでしまい、まるでQTEをどこまでもどこまでもひたすらやり続けている感覚に陥ってきます。またただでさえ単調なのに探索パートで一度攻略したマップをもう一周させる作りも酷い。


それに比べるとボス戦はカウンターやコンボなどある程度の修練を求める内容になっていてその分幾らか面白い。但しそれもコンボを覚え、カウンターの要領を掴むまでの話で、それが出来るようになってからは敵の攻撃を弾いて最も強力なコンボ叩き込むといった繰り返しになってしまいます。それはやはり各ボスとも見た目を除くとパターンが殆ど一緒で変化に欠けるからでしょう。つまりアスレチックアクションと比較して面白いとは言え、それは耐用年数が若干上というだけで本質的な問題点は両者とも同じという事です。

これらの個々の要素の単調さと、それを変化をつけることなく何度も何度も繰り返しやらせるねちっこさは、程度の差はあれ『Assassin's Creed』や『Far Cry 2』とほぼ共通している問題点です。ただ僕は本作をやる前にこの二作をやった時は、ゲームデザインにおいてスクリプトを否定してシミュレーションによる自動生成を目指して、そして失敗した結果単調になってしまったのではと思っていた。しかし本作で特にフリーローミング性に対して挑戦しているわけでもないのに相変わらず単調になっているのを見ると、どうやら原因はそこではない様にも思えてきます。

そう言えば上記二作よりももっと前の『Rainbow Six: Vegas』も、ゲームの個々の要素は良かったけれど、レベルデザインだとかいった仕込みはダメで、やはり同じ事の繰り返しになっていました。こうした事例から考えると、Ubi Montrealは最近フリーローミングをやり出してが強調される格好になっているけど、元々仕込みによる面白さに対して下手と言うか疎いと言うか嫌いと言うか興味が無いと言うか、とにかく否定的なスタンスなのではないか。

また逆に捉えれば『Rainbow Six: Vegas』での分隊操作の大幅な自動化や、『Assassin's Creed』や『Far Cry 2』でのフリーパスデザインという概念は、全て仕込みに頼らないゲームデザインを目指している事の表れだと思います。結果としてそれらは殆ど失敗してはいるけれども、その着眼点はゲームの将来的な進化の行方を先取りしているし、大義名分としてその心意気だけは買える部分もあると思うんですね。

しかし本作の場合はそういったチャレンジ精神は少なく、全体的に他よりも前世代的な路線に収まっており、またそれにも関わらずいつもと同じ失敗をしているのが他の何よりも程度が低い。本作の自由度何てたかが知れているし、シミュレーション要素も無いに等しいわけで、そうなると現実的には戦闘やダンジョンのバリエーションの豊かさで勝負していく以外に面白くしようがないわけでしょう。もしくはそれをしたくないのであれば『Assassin's Creed』の様にやらなくても良いデザインを目指せばいい。でもどっちも出来ていない。意味が分かりません。

まぁ『Assassin's Creed』という後継作がある以上本作の立ち位置ってそれだけで微妙だし、システムの多くが被っていながら端からイノベーションを捨てている所を見ても、作り手側も『Assassin's Creed』の出涸らしと言うか余ったパーツで組み立てた程度の意識なのかもしれません。

本作もまた、他のUbi Montrealの作品同様発売するまでが一番ワクワクしたゲームでした。

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