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2009/11/05 - 余りにもマニアック


『The Void』クリア。変なゲームだったぁ。そして意味が分からなかったぁ!それは本作の内容そのものが奇異だからというのもありますが、やはり一番の原因は英語の文章量の多さ。後半は所々字幕すら出てくれない場面もあって、僕の英語力じゃ最早追っていくことが出来ず、ストーリーの理解はまだらだし、ストーリー展開の分岐を楽しむ余地も無かった。なので僕の身から本作を正しく評価する事は出来ないのですが、それでも一応分かった範囲で書き綴っていきたいと思います。

まずエンディングは全部で13種類あるらしいのですが、僕が到達したのはSistersとは仲良くならずに自分一人の力だけでVoidを脱出する終わり方。これをやるにはHeartを21個全て収集し、全てのColorも満タンまで収集し、更に全てのHeartも最大までLymphaで満たさなければいけいない等と一番条件が厳しい。しかし僕は最後までどのSistersとも仲良くしてこなかったのでこれ以外に選択の余地が無かった。まぁ自分の性格らしいなぁとは思いましたが、Sistersの要素を十分に楽しまなかったのはちょっと勿体無かったか。


ゲームの流れは大筋は前回書いた事と変わりませんが、後半はLymphaの収集に加えてBrothersとの連戦が加わってきます。これについては必ずしもそういう展開になるわけではなさそうですが、少なくとも僕の場合は最終的に全10人中9人と相手する事になった。連中の強さは個々によって違いますが、殆どは勝つ事自体はそんなに難しくありません。しかしどの戦いでもLymphaの大量消費は免れられないのが悩ましい所で、後半はただでさえ先のエンディング到達の為にLymphaを積極的に収集していかなければならないのに、加えて彼等との戦闘が1サイクル一回の割合で起きるので、兎に角血眼になってLymphaをかき集め、戦闘の際は相手の弱点のColorを効果的に使って、なるべく消費を少量に抑えなければいけません。

この徹頭徹尾Lymphaのマネージメントにフォーカスしたデザインはそれなりに上手く出来ていて、結構高い自由度でありながら結局最後は制限時間ギリギリの35サイクル直前でクリアできるのも中々のバランス調整。Brothers戦にしてもそれの一要素として見るならば悪くありませんが、しかし戦闘そのものの面白さで言うと後もう一捻り欲しかった。

厳密に言うと初期の戦闘はこちらが取れる攻撃手段も少ない為、僅かな手札を上手に使わなければいけない面白さがありました。しかし後半万能な攻撃手段を手に入れてからは、殆どそれに頼れば問題なく、後は画面右上に表示される相手の弱点のColorの変化に合わせて的確に打ち込めばそれでいい。最後の一人との戦闘に至っては全く移動する事なく勝ててしまった。どの時期にどのBrothersと戦うかは不確定な為、段階的に難易度の変化を付けるのが難しかったのでしょうけれど、それでももう少し気利かせてくれなかったかなぁ。


Brothers戦に限らず本作のゲーム要素には後もう一捻り欲しいというものが多い。例えばロケーションも結局前回書いた様に小規模の空間が断片的に存在するに過ぎず、しかも後半はマイナーチェンジ程度の使いまわしも目立った。Lymphaの収集、Gardenでの養殖、Mineでの採掘といった行為も中盤まででネタは全て出尽くして、後半は同じ事の繰り返しで作業プレイになりがち。要するに平凡なのです。

そんな中唯一光るのがLymphaのマネージメントですが、これも相対的に見ると他の要素よりは秀でているという話であって、これ一つで本作のゲーム的な部分を支えられるほどの絶対的な強度があるわけではない。例えばこういう制限時間の中でステータス管理に主体を置いたゲームと言えば『THE iDOLM@STER』を思い出しますが、あれはもう練りに練られた絶妙なバランス調整があったからこそ、他が作業プレイでも面白かったわけで、本作もそれ位鬼気迫ってないと頭一つ抜けているとは言えない。

結局の所本作は見た目や雰囲気の奇怪さが全てで、ゲーム的な要素は取り立てて評価できる点は無いとしか言えません。ではその見た目や雰囲気は最高なのかと言うと、これについても引っ掛かる部分がある。それはズバリ言語的説明に依存しすぎているという点です。何だか自分の語学力の無さを棚に上げるような物言いで実際そうなんですけれども、別の言いかたをすると見た目や雰囲気の奇抜さこそあれど、それを一つの体験としてパッケージングできていないと言いましょうか。

ゲームの体験性の重要さは今まで再三触れてきたのでここでまた触れなおす事はしませんが、多分これを高めていけば言語的な障害があってもそれが極端にマイナスな印象には繋がらないと思うんですよね。『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』もダイアログ重視のゲームでしたが、例え言葉が分からなくてもコアの面白さ、その体験性のリアリティや凄みは変わらなかったでしょう。いやいやしかし実は本作の会話パートはとても詩的だったりして、それ自体が凄く魅力的なのかもしれない。この辺はもう言葉が理解できない僕では判断しようがありません。


まとめると、その特異さからメジャーゲームへのカウンター的内容を期待していたのですが、そういった意識の高さは感じられないキワモノ留まりのゲームでした。まぁキワモノはキワモノで好物だし、そういう意味で個人的には本作も好きな作品ではりますけどね。ただこれが『The Path』だった場合は、メジャーゲームを信奉する人にも薦めたい魅力というか、確認しておくべき同時代的な重要性を感じたんだけれど、本作にそういうものはない。言語の壁もあるし、これは余程マニアな人でもない限り薦められないなぁ。

しかし本作、本国ロシアではかなり高い評価を受けていて、後に完全版が発売されていたり、Russian Game Developers ConferenceではMost Non-Standard Gameという賞も受賞しているんですよね。まぁ確かに普通じゃないのは認めるけどさぁ、しかしそこまで広く受け入れられる内容なのかロシアでは!軽いカルチャーショックを受けましたよ。

ちなみにその完全版に同梱されていたボーナスディスクの中身が現在では本作の公式HPにて配信されています。中身はオリジナルサウンドトラックに、本作と『Pathologic』のTrailer、Russian Game Developers Conferenceの映像、原寸のアートワーク集、本作の開発者の一人Nikolay Dybowskiyによる、Russian Game Developers Conferencでの講演三種等など。しかしサイズが4G以上もあり、しかも配信方法がTorrent。僕も四日前からダウンロードしていますが未だ完了していません!つくづくハードルが高い作品だなぁ・・・


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