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2009/12/12 - インディーズゲーム三連発


前回のロシアクソゲー三連発に続き、今度は最近遊んだインディーズゲームを三つほどご紹介します。インディーズゲームというのはその名の通りアマチュアの人達や或いは小さな独立系デベロッパが開発したゲームの事で、日本での同人ゲームにあたる存在です。

概して小規模のプロジェクトばかりなので、グラフィックス等のお金が掛かる部分は大手と比べるとどうしても見劣りしてしまいますが、その代わりに大企業特有の商売上のしがらみに縛られないので、挑戦的で尖った作品が出てくる可能性もある分野。最近はメジャーゲームの大規模化に伴う停滞感やネットの普及により作品発表の機会が増えた事で、ここ二、三年で急激に規模が拡大してきています。但し他のどの分野もそうであるように、インディーズゲームも例に漏れずピンからキリまで。まぁ何はともあれ早速個々の作品の紹介に移りましょう。

・Dreamside Maroon


アメリカのDigiPen Institute of Technologiesの学生による作品。DigiPen Institute of Technologiesはコンピューターテクノロジーの専門学校で、特にビデオゲーム開発者の育成に力を入れている所。ここは毎年GDCのインディーズ部門であるIGFに学生作品を提出しており、中でも2006年度に提出され受賞した『Narbacular Drop』は、後に開発した学生達がValveにスカウトされ『Portal』を生み出す事に繋がった話はあまりにも有名でしょう。Digipenは来年のIGF2010にも作品を提出するらしく、その内の一つが本作『Dreamside Maroon』。

内容は至ってシンプルで木の根っこをウネウネと伸ばしていってチェックポイントを辿って行く、ただそれのみ。ゲーム的な駆け引きは全く無く、成長していく根っこの軌跡と周りの有機的な物体や飛び交う光が生み出す視覚的体験、また状況に応じて変化していくBGMによる聴覚的体験に特化させた作品と言えます。


Digipenの学生の作品だけあって全体的に中々高い質ですが、ぶっちゃけて言うとコレ『The Path』のクローンでしょ?ゲーム性を徹底的に廃したデザイン、移動する事が目的でその軌跡を視覚化するギミック、チェックポイントを通過する毎に画面に詩が表示される等類似点がとても多いし、実際かなり意識していて影響も受けているんだろうね。

ただ『The Path』の方が何枚も上手で、その理由は幾つかあるけれどその内の一つは意外性という点にあると思います。例えば赤ずきんちゃんをモチーフにしつつそのイメージから逸脱した作風の意外性。また本来森にありそうにないオブジェクトにインタラクトして行く意外性や、進行状態によっておばあちゃんの家がとんでもない事になる意外性。こういった予定調和を回避していく色々な意外な仕掛けがありました。

そんな『The Path』もゴスロリ系の一言で済ませられてしまう脆さもあるのですが、少なくとも本作よりかはずっと意外で逆に本作は素直過ぎる。月に旅行に行くというおとぎばなし的な設定があって、それに合わせて幻想的な風景が映し出されて、最後は月に着いてお終いってのは普通過ぎる。やっぱゲーム的な部分を排除している反面、こういった所をシビアに作らないと中々作品の強度は上がらないと思います。

まぁでも学生の作品という事を考慮すれば十分及第点。甘いところがある分のびしろも感じます。尚本作はDigipenの公式サイトから無料でダウンロード可能。大体30分もあれば終わってしまう小作ですが、学生の作品なのでこんなもんでしょう。

・Igneous


先ほどと同じくDigipenの学生による作品で、こちらも来年のIGFへの提出作品。Totemというキャラクターを動かしてダンジョンを駆け抜けていくアクションゲーム。海外のサイトで3D版ソニックだと書かれていましたが正にそんな感じで、崩れる足場や飛んでくる火の玉を掻い潜りながらハイスピードに突き進んでいく内容はソニックそのものです。

ただこれだけならば別に大した事ないのですが、本作がユニークは物理エンジンを大幅に取り入れ、視覚的効果の為だけでなくゲーム性そのものにも絡んできている点です。まず視覚的効果という点で言うと、足場がどんどん崩れていったりブロックや溶岩が吹っ飛んでくる様子が全て物理エンジンで演算されていて、その上量も多いので臨場感はとても高い。そして操作キャラクターは水平垂直問わず、体の何処かの箇所が何かに触れていれば常にジャンプできるという特性があるので、それを利用すれば万が一足場から転落しても周囲の落下しているブロックを使った多段ジャンプによってフィールドに復帰するなんて芸当も可能です。


物理エンジンをゲームデザインそのものに活かすという試みはメジャーゲームでも度々行われてきた事ですが、中々上手く行き辛い為最近は大抵の作品は視覚効果のみという無難な形式に収まりつつあります。そんな中でインディーズの立場からその利用価値を探ろうとした心意気は買いたい。実際成果が出ていないわけではないしね。ただその反面やはり問題点があるのも事実です。

一番の問題は物理エンジンである為にその動きを制御しきれないという事で、これは多くの物理エンジンを活かそうとしたゲームにとっての悩みの種ですが、本作も例外ではなくドツボに嵌っています。具体的に言うと足場から転落した時等にそこに丁度良くブロックがあるかがもう完全に運なってしまうので、これをゲームシステムとして活かすにはあまりにも不安定です。また第二の問題は物理エンジンが適用されたオブジェクトが多すぎて、しばしば目の前を遮り進行方向が見えなくなってしまうという事。これもまた量を減らしたり小さくしたりすると、前述したゲームシステム上の利用価値が無くなってしまうので難しいところです。

これらを解決するには後者の問題ならば、例えば目の前に障害が飛び出てくる事を肯定するデザインにするとか、色々な手の打ち方があると思います。本作はステージ数も三つでプレイ時間も15分も満たないし、まだまだ試すべき余地が十分あるはず。

この作品も前項の『Dreamside Maroon』同様Digipenの公式サイトから無料でダウンロード可能です。

・Osmos


今回の一押し作品。Hemisphere Gamesの作品で、IGFのD2D Visison Award 2009をはじめとした数々の賞に輝いている実力派。細胞みたいなものを操り自分より小さい細胞を吸収しては大きくなってを繰り返し、指定された大きさまで成長させたり特定の細胞を吸収する等を条件を達成していくゲームです。こう書くと『Spore』の細胞ステージを思い出される方が居られるかもしれませんし、実際似ている部分も多分にある。しかし本作はそれだけではありません。

『Spore』と最も異なるのは操作性で、自機を動かす為には進行方向の反対側に小さい細胞を吐き出しその反動で移動するという、いわばジェット噴射の様な方法を用います。その為機敏に動く事は不可能で、また無闇に動き回ると細胞を吐き出し過ぎて周りの細胞を吸収する余力が無くなってしまう。こうしたルール設定になっている為『Spore』よりも難しく、それなりに考えて動く必要があります。しかし前半厳しい分一定の大きさになるとどんどん吸収していけるようになり、吸収すればするほど豪快に振舞える様になるのが本作の気持ちいい所で、このような特性から考えると本作は寧ろ『塊魂』に近いとも言えます。


しかし本作は『塊魂』よりも面白い。それは基本的にステージ毎の変化が見た目とマップ構造のみで単調だった『塊魂』に対し、本作はアイディア豊かなステージ設計がされていて多様性があるからなのですが、その中でも僕が特に気に入ったのが上の映像のステージ。ここでは全ての細胞は静止していて、そのままだと始めの小さい細胞があるエリア内しか動き回る事が出来ません。そこで細胞を吐き出す運動エネルギーを利用して、わざと別の細胞にそれをあてて微動させるテクニックが必要になります。これで細胞同士の吸収し合いを誘発させられ、そこから活路を開いたりこちらが吸収可能な程小さくなった所を奪ったりだとかいった戦略が立てられるのです。

このステージが素晴らしいのは自分の行為によって環境も変わるというところにあります。一方的に細胞を食らうだけでなく時には与える事で相手をわざと大きくしたり、逆に自分が小さくなる必要もある。この様な自分と環境との間にある緊張と調和の関係は、有機的な見た目も相まってある種のライフサイクルのシミュレーションの様なものにまで感じられました。この様な観点及び価値観は『塊魂』を始めとしたただ一方的に大きくなり一方的に征服していくだけのゲームとは異するものであり、ゲームとしてより高度な思考を必要とされて面白い上に、それだけに留まらない魅力があります。

これ以外にも太陽系を模したかのような中央の巨大な細胞の周りを公転しながら他の細胞を吸収していくステージや、自機以外にもを能動的に他を吸収しする細胞と競い合うステージなど多用なシチュエーションが用意されており、どれも有機的な活動を連想させるもので面白い。しかし一つ残念なのがゲーム後半から難易度が上がっていくにつれ、段々と遊びが利かない詰め将棋と化してしまう事。こうなってくるとルートを完全に決めて何度もトライ&エラーを繰り返さなければならなくなってきて窮屈だし、ゲーム中の有機的な現象を楽しんでいる余裕も無くなってしまいます。単純に難易度上げれば面白くなるって事では無いと思うんですよね。

ただその一点を除けば印象はすこぶる良い。総プレイ時間は4時間も満たないし派手さもありませんが、小規模ながらハッとさせてくれる良作です。公式サイトから10ドル、Steamからは9.99ドルで購入可能です。

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