|
|
|
|
|
2009/12/18- 継続は力也、歴史は偉大也
『Assassin's Creed II』をやっています。これは良い。前作は素材が良くても調理が最悪って感じで本当どうしようもなく、ここ最近のUbi
Montrealの傾向から考えても本作はまた偏屈な出来になるんじゃないかと危惧していましたが、良い意味で裏切られました。
最も素晴らしいのは前作の数多くの問題点や、それに対するユーザーからの不満を聞き入れ実直に改善を施している事。これは常に求められる事でありながらも実際実現できている作品は少ないのですが、そんな中本作はしっかりとした成果が出ていて素晴らしいです。
もっとも前作があまりにも問題だらけだった為ゲームの構成は大幅に弄られていて、パルクールやタイミング重視の戦闘、広大なマップという基礎的な要素は同じもののそれらの構成方法はかなり変化しています。追加された要素も金銭やそれに伴う店の概念、盗賊や娼婦を雇って同行させる等多岐に渡りますが、それらによって結局どうなったかと言うと『Grand
Theft Auto IV』化って事で結論付けられるんじゃないでしょうか。
ちょっと『Grand Theft Auto IV』の話をさせてもらうと、あれがフリーローミングとして何処が優れているかと言うと、プレイヤーに自由に動き回ってもらうのを促しつつ、その行為の中でイベントが偶発的且つシームレスに起き続けて行く点にあると思うんですよね。例えばバイクを運転していたら事故ってダメージ受けたから回復の為屋台を探したら服屋も近くにあったのでそっちにも寄って、そしたらフレンドから電話が掛かってきて盗んだ車で迎えに行ってって具合に、決して途切れる事無く何かが続いていく。
要は終わり無き寄り道リレーで、気が付いたら街を一周していたって感じのデザイン。しかもそれをプレイヤーに無理強いせず、背中をポンと押しては来るんだけど実際やるかどうかはプレイヤーに任せる柔軟さがあって、決してやらされている気にはならない。『Grand
Theft Auto IV』は個々の要素もそれぞれバリエーション豊かで質が高い作品でしたが、しかしその極意はそれら個々の要素のマップへの分布のさせ方、そしてそれらを繋いでその導線上にプレイヤーを乗っからせる構成力にあったと思います。
逆に本作の前作は建前上フリーローミングでありながら、事実上決まった事を決まった手順でやる事しかできず、しかもそれが反復作業のように代わり映え無く何度も続いていくという、クソみたいな内容でした。本作はそれを反省し前作までのこうした構成は全撤廃、その代わり上記した『Grand
Theft Auto IV』の構成法を相当見習って、ある意味パクっている。
この成果は大きく、全体的にアイテム収集と戦闘とアクションに特化されているのは『Grand Theft Auto IV』よりも多様性という点では劣るものの、それでも取れる行動の選択肢は大幅に増えてそれぞれの結び方も上手い。正に個々の要素が偶発的且つシームレスに起き続け、またプレイヤーの移り気にも対応できる柔軟さがあります。
特にアイテム収集に関しては前作の旗集めの様な完全な自己満足なものは減り、多かれ少なかれ必ず何らかの報酬が得られるようになっていたり、またマップ上に本当に大量に仕込まれているのでちょっと歩けば手に入るという手軽さと快感がある。またこれによってプレイヤーの自発的に移動や探検を促し、自然と箱庭のマップやその中で起きるイベントに関われる機会をより増やすという、いわば個々の要素の接着剤か又は引き立て役としても機能していて、扱い方がとても上手いです。
|
絵画を集めていけば自分の領土の資産価値が上がり、収入も増える。勿論観賞も出来る。 |
他にもその個々のイベント、クエストだとか店での売買だとかも前作の様なミニゲームまがいの作業の繰り返しではなく、一つ一つが趣向が凝らしてあって存在感がある。この扱い方や遊んだ時に受ける印象もまた『Grand
Theft Auto IV』からの影響を強く感じます。
ただバリエーションが増えた分前作以上に暗殺やステルスという要素が希薄になって殆どストーリー上の設定に過ぎないものになってしまっている嫌いはありますね。クエストの傾向は上の動画のステルス重視のものから下の戦闘重視のものまで色々ですが、全体的に見ると多分にアクション寄り。ステルスとして見るとルーズ過ぎて余程の自主的な縛りを設けない限りそれらしい遊び方をするのは難しい。寧ろ『BioShock』の様に数ある手札を用いて敵を色々な方法で倒す事に重きが置かれているし、その意味では質は高いので素直にそういう遊び方をした方が楽しめます。
後改善された点と言えばストーリーも挙げられるかな。前作は発売されるまでこの作品の世界が実は現代の人々による仮想体験だったって事が伏せられていて、その世界観ぶち壊しの設定にはかなりの批判が集まっていました。また現代パートと過去パートを行ったり来たりするのは没入感の妨げにもなっていたし、現代パートでのアドベンチャー要素も退屈なだけでした。
それを反省してか本作もまた前作同様現代からの仮想体験という設定自体は変わらないものの、一度過去パートに移ってからは中盤の一回を除いて、現代に戻される事は殆ど無し。なので余計な茶々を入れられる心配は無くなりましたし、それどころか今回はこの現代から過去の時代を見るという設定を十分に活かせているとすら思う。
本作は前作では最後までやらないと分からなかった、"テンプル騎士団による現代まで続く陰謀"という真相が始めから発覚した状態で進められるので、ストーリーもそれも踏まえた構成になっています。具体的に書くと歴史上のあの出来事やこの出来事は全てテンプル騎士団の仕業だったのだ!という調子で、ルネッサンス期に実際に起きた史実をテンプル騎士団というフィクションを加えた上でプレイヤーに体験させるわけです。
これは正に『ダヴィンチ・コード』そっくりで冷静に考えればトンデモ話なんだけど、何せレオナルド・ダ・ヴィンチやロレンツォ・デ・メディチ等実在した人物、フィレンツェやヴェネツィア等実在する場所や建造物、パッツィ家の陰謀等実在した出来事を基に描いているから、その説得力はなまじ架空世界を舞台にした中世"風"ファンタジーとは一線を画しています。またこれは前作の舞台だった12世紀の大シリア時代よりも、本作の15世紀のルネッサンスの方が一般人にも良く知られていて(少なくとも日本では)親近感がわきやすいというのも大きいでしょう。勿論見た目の美しさは言わずもがなだし、本作の半分はこの舞台の強さで持っていると言っても過言ではありません。本当良い舞台設定が出来ていると思う。
また歴史ものという事で当時の歴史や社会風俗を学ぶ初歩的な教材として、或いは観光ガイドとしても本作は素晴らしい。本作は名所や著名人、風習等の情報がライブラリーに沢山記載されていき、実際のゲームの場面と照らし合わせながら読んで理解していく事が出来ます。この手の舞台設定等の情報を辞典化してゲーム中に参照できるシステムは他にもありますが、これもやはり本作は実際の歴史や土地を舞台にしているので単純にゲームへの理解を深める以上の価値がある。
ハッキリ言って世の中学生、高校生諸君はつまらない世界史の授業を受ける位だったらその時間をこのゲームを遊ぶのに費やした方がよっぽど歴史への理解を深められると思う。あ、でもこれCERO-Z指定だから無理か。ここら辺レーティングって融通利かないよねぇ。遊びと一体となった学習って理想的な在り方で、彼等の言う青少年への有害さ以上の有益さがあると思うんですがねぇ。
まぁそれはともかく、ここまで一方的に褒めちぎってきましたが本当に本作は良く出来ている。最初にも書いた様に前作が抱えていた多くの欠点が潰され、更に磨きがかかっている素晴らしい続編です。ようやく最近のUbi
Montrealの活動が身になってきたって感じで、こちらも毎回新作が出るたびに呆れつつも追いかけ続けた甲斐があったというものです。
強いて難点を言うならば、調理の仕方は変わっても素材自体は前作とほぼ同じですから、前作を全面的に否定している人は本作も向かないでしょう。逆に前作を前半までは楽しめたという人は、その後嫌になった理由であろう単調さが払拭されている本作はオススメです。また『Grand
Theft Auto IV』の様なフリーローミングの作品が好きな人にもうってつけ。
こうなると気になってくるのは『Splinter Cell: Conviction』や『Far Cry 3』の行方でしょう。特に『Splinter
Cell: Conviction』は何かと本作と被っていますが、本作は殆どステルスをしていなかったので、多分それをステルス寄りに調整した感じになるんだと思う。ただそれだけだと味気ないので、本作には無い全く別の何かも欲しいですね。これは『Far
Cry 3』も同様。何にせよ今後のUbi Montrealは楽しみです。
最後に日本語版のローカライズの話をすると、本作は日本語音声と字幕の他に英語音声と更にイタリア語音声まで収録されていて、自由に選択が可能になっています。ここまで豪華なローカライズはそうそうありません。とは言え街の人々の会話等字幕が表示されない場面も多いので、初めは無難に日本語音声で楽しんだ方が良いでしょう。
|
|
|
|
All trademarks and trade names are the properties of their respective owners.
Copyright (C) BaNaNaBoNa 2008-2009 All rights reserved. |
|