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2009/12/30- 私的Game of the Year2009


今年も残すところ後僅かという事で一年の総まとめ、ゲーム界隈では恒例のGame of the Yearを僕も独断と偏見でやっちゃいます。ちなみに去年のまとめはこちら。前回はサイト開設間もなくてかなり適当に済ませてしまいましたが、今回はもう少し本格的に行いましょう。

まずこの1年で遊んだゲームの本数は延べ60本で以下にリストアップ。PC以外のプラットフォームの作品は括弧書きでハード名を記載。日記で取り上げた作品はそちらへのリンクも貼ってあります。また記号で大雑把な五段階評価も付けてみたので目安にして下さい。

●=とても良い ○=良い ▲=普通 △=駄目 ×=とても駄目
Assassin's Creed II (Xbox360)
Batman: Arkham Asylum
●Bejewelwd 2 (iPhone)
Borderlands
●Braid
Brothers in Arms: Hell's Highway
×Brothers In Arms: Hour of Heroes (iPhone)
▲Call of Cthulhu: DCOTE
Call of Duty: World at War
Call of Duty: Modern Warfare 2
Call of Juarez: Bound in Blood
△Cogs
Cryostasis: Sleep of Reason
×Doom: Resurrection (iPhone)
Dreamside Maroon
FATALE
×F.E.A.R. 2: Project Origin
Gears of War 2
▲geoDefence (iPhone)
Grand Theft Auto IV
×Hellforces
Igneous
×Instinct
▲iShift (iPhone)
Jurassic Park: Trespasser
○Machinarium
Mass Effect (Xbox360)
Mirror's Edge
NecroVisioN
▲N.O.V.A. (iPhone)
▲Operation Flashpoint: Dragon Rising
×Operation Matriarchy
Osmos
●Peggle (iPhone)
▲Penumbra: Black Plague
▲Penumbra: Overture
▲Penumbra: Requiem
Prince of Persia
△Roach Madness (iPhone)
RoboLogic (iPhone)
○Rolando (iPhone)
○Shadow Complex (Xbox360)
×Silent Hill: Homecoming
×Silent Hill: The Escape (iPhone)
▲Sim City (iPhone)
×Stalin vs. Martians
▲StoneLoops! of Jurassica (iPhone)
Tetris (iPhone)
The Path
The Void
Uber Soldier 2
Under Siege
×Wolfenstein
○Zen Bound (iPhone)
Zeno Clash
アイドルマスター: ディアリースターズ (DS)
×ドリームクラブ (Xbox360)
ビューティフル塊魂 (Xbox360)
ラブプラス (DS)
○塊魂モバイル (iPhone)

今年の全体的な印象はおおまかには去年と同じ。つまり欧米のメジャーゲームはPCとコンソールの比重が逆転し、またコンソールを中心にして見ても開発費高騰に端を発した作品の無難化又は没個性化、続編の増加と新規IPの減少といった閉塞感が漂っていました。寧ろ傾向的には去年より今年の方がより酷くなっていると言えるでしょう。PCゲームは立場が逆転どころか完全に蚊帳の外、新IPも年間通してみても目立つのは僕が遊んだ中では『Borderlands』ぐらいととても寂しい状況です。

しかし悲観的な話ばかりでもなく、欧米のメジャーゲームとは別軸の新たな潮流も今年になって明確に見えてきた様に思えます。一つは欧米のコンソール偏重によりポッカリが穴が開いてしまったPCのコアゲーム分野に、東欧のゲームが入り込んできている事。東欧の作品と言えば07年の『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』が有名ですが、あれ以降毎年傑作クラスの作品が少数ながらもリリースされ続けています。確かに作品数はまだまだ少ないし、平均的なレベルも欧米とは依然として開きがある。しかし重要なのは成長傾向にあるという事で、閉塞感に包まれている欧米よりも期待できる部分もあるのです。

もう一つの動きはインディーズゲームがとても存在感を増してきた事。これも流れ自体は07年からあるものですが、年を重ねるにつれデジタル流通システムの整備が進み、それに応じて作品数も右肩上がり。良質な作品にめぐり合える機会も増えました。特にiPhoneの普及は大きく、上のリスト作っていて初めて気づいたのですが、僕もPC以外のプラットフォームで一番遊んでいるのは実はXbox 360でもDSでもなくiPhoneなんですよねぇ。

但し華々しさの裏には問題もやはりあります。最も大きいのは宣伝媒体の不足で、大手メディアではどうしてもメジャーゲームの様には扱ってもらえないので、作り手にとってやり辛いのは勿論、遊び手にとっても動向の把握が難しい。作品の絶対数の多さもまたそれに拍車を掛けています。この問題が一番顕著なのもやはりiPhone。まるで雨後の筍の如く次々と新作がリリースされているのですが、App Storeのインターフェイスが最悪なのと相まって完全に1割の傑作が9割の駄作に埋もれてしまっている状態。ちょっとでも情報収集を怠ると途端に動向が分からなくなります。

iPhoneについてもう少し書くと、タッチパネルや加速度センサー等の独特なインターフェイスもまたゲームをデザインする上での大きな障害になってますね。特に大手のタイトルはTPSやFPSに挑戦するのは良いんだけどどれも操作性が劣悪で、それをフォローするかのように内容の方も骨抜きになってまるで駄目。そういった無茶な事をしていない作品ならばまだマシですが、iPhoneオリジナルで良い作品は少なく、結局最終的には『Peggle』等PCゲーム発で元々全プラットフォームに難なく対応できそうな内容のものが一番面白いって事になっちゃう。そうした理由からiPhoneのゲームのレビューも一回きりでやる気が無くなってしまいました。インディーズゲームはより一層の情報インフラの整備、iPhoneはそれに加えてゲームの淘汰と成熟が望まれます。



以上が今年の感想でした。続いてGame of the Yearの選出に移りますが、上記した事を踏まえ一般的なメジャーゲームとインディーズゲームの区別の他に、東欧ゲームの括りも加えて取り上げたいと思います。超偏っていますがどうかご勘弁。

■インディーズ部門 - 『The Path』


Tale of Talesの『The Path』が、今年のインディーズゲームの中ではダントツで一番でした。体験性に絶対的な比重が置かれていてゲーム性を殆ど廃したデザインは一見インディーズならではの思い切りの様にも思えますが、実はメジャーゲームでも『Call of Duty: Modern Warfare 2』の様にハリウッド映画化というほぼ同じ事が起きている。勿論本作の物語性や体験性はハリウッド映画のそれとは真逆を行くものですが、しかしそれを表現する上での方法論はハリウッド映画化を目指すメジャーゲームの諸作品と驚く程近い。その意味で本作はメジャーゲームに対して逆説的な提案に成り得る作品で、また同時代的な重要性も高いと判断しました。

その他グラフィックスに対して他には見られない拘りを感じられたのも評価点の一つ。大作の様なリッチさとは無縁ですが、その代わりアート系のアニメーション等に見られるエフェクトの類を、ゲームのインジケーターとしての役割も加えながら積極的に活用しています。アートの文脈をゲーム的必然性へ非常に上手く翻訳出来ています。

次点
Osmos
Zeno Clash

■東欧部門 - 『Cryostasis: Sleep of Reason』


『Cryostasis: Sleep of Reason』もまた『The Path』と同じく物語性や体験性に注力された作品で、Mental Echoという過去の出来事を死者の視点で追体験できるシステムは演出としてとても優れているし、『Half-Life』や『System Shock 2』以来今も続いているオーディオログの順当な進化形態としての価値もある。

また本作は開発した東欧の人々の民族性や感性をこの上なく表した作品とも言えるでしょう。極寒の描写や自然哲学に重きを置いた物語はハリウッドを追従するメジャーゲームには全く見られないもので、単に独特なだけでなく東欧の民族のアイデンテティーをも包括して代弁しているかの様です。正に東欧部門の今年一番に相応しい。

次点
The Void
NecroVisioN

■メジャー部門 - 『Assassin's Creed II』


今回一番選出に悩んだメジャー部門ですが、あれこれ考えて最終的に『Assassin's Creed II』に決定。前作にあった革新性は後退してしまっていますが、逆に前作のあまりにも多かった問題点を克服し、どの角度からみてもとても高い質でまとまっている秀作。特に15世紀のイタリアを舞台に選んだそのセンスと作りこみは素晴らしく、メジャーゲームらしい贅沢さやリッチ感に包まれています。

尚当初メジャー部門は『Call of Duty: Modern Warfare 2』にしようかなと思っていたんですが、4Gamerの記事で日本のゲーム開発者が悉くこの作品に万歳しているのを見て嫌気がさしました。ただ理由は他にもあってインディーズ部門と東欧部門がああいうラインナップで来て、ここで『Call of Duty: Modern Warfare 2』まで選んだらあまりにも傾向が一緒で単調過ぎるかなと。

近年のゲームの傾向として物語性や体験性にフォーカスした作品が増えてきていて僕もそれを楽しんで見ているのですが、一方でこの傾向の強い作品程ゲーム性が少なくなってきているという問題点もあります。これは『The Path』、『Cryostasis: Sleep of Reason』、『Call of Duty: Modern Warfare 2』にもピッタリ当て嵌まる。現状はそれも良しとされているけれど、ゲームが双方向メディアである以上この問題は解決されなければなりません。

この問題の解決策の一つがフリーローミングという手法なのではないかと僕は考えています。具体的に言うと『Grand Theft Auto IV』の様なアプローチの仕方ですね。つまり線形メインストーリーを用意しつつも、ゲームの割合自体は大半を非線形の体験で構築する方法。その上であの作品はストーリーを主人公の人生として記述し、非線形の体験も主人公の人生上の一コマとする事で、線形のメインストーリーと整合性あるものにしつつ、時にはそれが線形のメインストーリーで描かれる事をより意味深いものにもしていました。この手法は一部ドキュメンタリー表現に被る部分もあるかなと思ってとても感心したのですが、残念ながら『Grand Theft Auto IV』は昨年の作品なのでここでは選出できない。

幸いにもこの功績をそっくりトレースしたのが『Assassin's Creed II』という作品でした。ただ所詮トレースなのでオリジナルと比べると若干質は劣るのですが目の付け所は鋭い。本作の開発スタジオのUbi Montrealはこれの前作や『Far Cry 2』で非線形でありつつも高い物語性を得ようとして失敗した過去がありますから、それを成し遂げた『Grand Theft Auto IV』を見逃すわけには行かなかったのでしょうね。

昨年の作品の功績をトレースした作品を、それを理由にGame of the Yearに選出するのってどうなのって考える向きもあるでしょうが、結局そこが今年のメジャーゲームの限界という事なのかもしれません。『Call of Duty: Modern Warfare 2』だって方法論自体は前作から流用しているに過ぎないわけですから。それにフリーローミングのゲームは作品を構築する上で必要な情報量がとても多い為、大規模な開発環境でないと作りづらい作品です。そういうジャンルにこそメジャーゲームは関わっていくべきであって、そこに現行のゲームデザイン上の問題を克服する鍵があるとすれば尚更です。こうなるとやはりこの場では『Assassin's Creed II』を選んでおくのが妥当だと思います。

次点
Call of Duty: Modern Warfare 2
Borderlands



最後に来年の予想ですが、傾向自体は今年と大して変わらないのではと思いますね。Project Natalが来年末に投入されるのではないかという噂も一部でありますが、どっちにしろ本格化するのは再来年以降でしょう。またキラータイトルが多く控えているわけでもなく、去年や今年と同じ様な停滞色になる可能性が大きいです。

そんな中個人的に期待を寄せている来年発売予定のタイトルはひとまず『Alan Wake』、『Mafia II』、『Metro 2033』、『Splinter Cell: Conviction』の四作でしょうか。前者二作品は去年も期待作として挙げたのですが結局どっちも発売されませんでしたね。どちらもフリーローミングで尚且つ物語性や体験性を重視している様で自分好み。特に『Mafia II』は『Grand Theft Auto IV』があのような進化をしたのに対してどう出るのかが注目です。

一方の『Metro 2033』はその存在自体は2006年から確認できましたが、今年後半にTHQから発売されると発表されて一気に注目度が上がりました。『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』のコアメンバーが多数関わっているとの事で実績は十分と言えるでしょう。一方の『S.T.A.L.K.E.R: Call of Pripyat』は流石にマンネリな気もしてきています。

『Splinter Cell: Conviction』は迷走に迷走を重ねてやっとの発売ですが、一足早く発売された『Assassin's Creed II』は見事に汚名を挽回してみせたので、本作も上手くやってくれるんじゃないかと期待しています。問題は『Assassin's Creed II』と被っている部分をどう差別化するかでしょうが、『Assassin's Creed II』はかなりステルス色が控えめだったので、それを濃くしてくるのかなと想像しています。

以上私的Game of the Year2009でした。今年の更新は恐らくこれで最後になるでしょうが、来年もまた宜しくお願い致します。

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