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2010/02/05- パマギーチェ2010


今年もやって参りました。『S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat』の時間です。07年の『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』や08年の『S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky』に並ぶ、シリーズ三作目。ローカライズに手間取ったのか北米版の昨年中の発売は叶わず、一年のブランクが空いてしまいましたが、まずは無事リリースされた事を喜びましょう。

とは言え前二作に比べて明らかにメディアへの露出が少なくて、第一作が発売されてからもう三年近く経っているし、いい加減マイナーチェンジだけで引っ張るのはマンネリなのではないかと思っていたのも事実。そういうわけで本作への期待値はそこまで高くなかったのですが、実際やってみても期待以上でもなく以下でもなくという感じですね。

まず内容の解説の前に、これまた毎回恒例のバグ情報を。北米版は先行でリリースされたロシア版のパッチが全て適用済みなので主たる問題は解決されているようですが、まだ幾つか問題があるようで、その内の一つが32bit OSではGraphic OptionのTexture Detailが最大に出来ないという問題。

これは32bitのOSの1プロセスあたりのメモリの最大利用可能量が2GBという制限に絡んだものらしく、今までのシリーズでは問題無かったのに何故本作でこの様になったのかは分かりませんが、兎に角このままでは前作や前々作よりも汚いグラフィックスで遊ぶ羽目になります。

これの対処方はOSにより違う様ですが、今回僕の環境であるXPの32bit版における方法を書いておきます。後当然自己責任でお願いします。

1. Cドライブ直下のBoot.iniのプロパティを開き、"読み取り専用"のチェックを外した後、開く(もしファイルが無い場合はフォルダオプションの表示の項で、"全てのファイルとフォルダを表示する"をチェック、"登録されている拡張子は表示しない"と"保護されたオペレーティングシステムファイルを表示しない"のチェックを外す)。
  
 
2. 文字列の最後尾に"3GB/userva=2500"を追記して上書き保存。
 
3. 再起動。

これでTexture Detailを最大まで設定する事が出来るようになります。しかしこれと関係があるのかは分かりませんが、プレイ中突然真っ暗になって一切の操作を受け付けなくなる問題も頻発し、こちらはまだ対処法を掴めていません。何か分かればまた書きたいと思います。

さてそれで内容の方ですが、基本的な部分は『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』や『S.T.A.L.K.E.R.: Clear Sky』の要素を引き継いでおり、そこに幾つかの新要素が加わっているという感じです。

最も大きな変化はマップが従来の様に中規模の大きさのものが幾つか連なっている形態ではなく、巨大なマップが三つあってその中に色々なロケーションが盛り込まれている、要は『Far Cry 2』みたいな形式になりました。これによってより現実的なスケール感が感じられるようになりましたが、一方で作りこみは前作のSwanpsに毛が生えた程度で、一面積辺りの密度感は減ってしまっています。そして本シリーズのグラフィックスは元々そこまでハイテクではないので、作りこみがなくなると途端に時代遅れに見えてきてしまう。


そしてもう一つの大きな変化は前作の見所だったFactions Warが無くなった事。NPC達は依然小隊を組んで移動し、敵対する組織と鉢合わせになったときは戦闘もしますが、前作の陣取りの概念は無くなり、またそれに伴いプレイヤーもどこかの組織に肩入れする事は出来なくなった様です。ただその分ミュータント達と争う機会はより増えたみたいで、また今まで殆ど同じ場所で戦闘が起きていたのに対し、本作ではかなりランダム性が上がっていますね。


後は薬の種類が増えたとかクエストに情報収集の概念が加わっただとか殆どマイナーチェンジ。そしてこれらの変化により、本作はよりフォーマルな箱庭FPSになったという印象を受けます。本来強烈な個性で売っていた本作にっては良くないことですね。これはマップの作りこみの減退やFactions Warの削除、つまりA-Lifeを知覚できる機会の減少といった本作自身の問題が原因でもありますが、もう一つはこの手のFPSが近年増えてきた為、相対的に本シリーズの特異性が無くなって来たという気もします。

またもう一つ重大な問題は前作以上に難易度が上がり、更に初心者の為の配慮が全く無い事。本作では初っ端からSnorkだとかBloodsuckerだとかいった強力な敵が登場し、また武器や防具も従来だったら中盤以降手に入るものがいきなりどかどか出てくる。その上で本作からの新しい要素をこなす事も全て同時に求められるし、これらの解説は殆ど無い。

こういう新規ユーザーを度外視したバランスと新規性の貧しいデザインでは、幾ら元が魅力的でも閉塞感や停滞感を感じてしまうのはやむを得ない。逆を言えばここまで初心者を切り捨ててハードコアに努める作品は最近は全く無いので、数少ない真のコアゲーマー向け作品としてのニーズは依然としてあるのかもしれませんけれども、普通に考えればもう拡張パック+αで引っ張るのは限界だと思います。

ただ決して面白くないわけではありませんよ。相変わらず世界観は魅力的だしそれを体感させる方法も秀でている。特に本作はサブクエストが良く作りこまれていて、『Far Cry 2』の様な類型的なおつかいの繰り返しではなく、一つ一つゲーム的にもストーリー的にも趣向が凝らしてあって、ショートストーリーとしての存在感すらある。そういう良い所もあるわけですから、もっとしっかり作りこまれて進化した本シリーズの姿も見てみたいと思うのです。

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