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Crysis Warhead
開発: Crytek 販売: Electronic Arts - 2008
プラットフォーム: PC



■ミスター・PCゲームの逆襲なるか

様々な期待と失望が織り成された『Crysis』が発売されてから1年が経った。PCゲームの優位性を証明すべく堂々と登場したミスター・PCゲームだったが、しかし実際は現在のPCゲーム界の問題をより浮き彫りにするという、何とも皮肉めいた結果に終わってしまった。

その後PCゲーム界は更に悲観論が増してしまう事になった。当のCrytekも今までの方針を改めざるを得ない状況に置かれていた。PCゲームオンリーを貫くか、もしくは収益確保の為にコンソールに手を出すか。

そうした敬意の中で、『Crysis Warhead』は世に放たれた。Crytekは本作の興行的成果によって、以降の自社の方向性を見極めると宣言した。これはミスター・PCゲームにとっての、最後の砦なのだ。

再び戦場へと赴かん。プレイヤーにとっても、そしてCrytekにとっても。

■更にハリウッドこそ至高という意志の下に

『Crysis Warhead』(以下Warhead)は、前作『Crysis』のスタンドアロンのスピンオフ作品だ。主人公は前作のNormadから仲間として登場していたPsychoに変わり、『Crysis』と同時系列で別の場所で起きていた出来事を体験していく事になる。

Normadが巡洋船の爆破作戦に成功した後、別行動を取っていたPsychoは、そこで北朝鮮軍が極秘に運搬するコンテナを発見する。Psychoは上官のEmersonの指示、そして仲間のO'Neillの援護の下、コンテナとそれを輸送するLee大佐を追跡していく事になる。

今回主人公がややフリーマン気のあったNormadからお喋りで挑戦的なPsychoに変わったことにより、それに合わせてストーリーテリングにも変化が見られる。

一番大きいのはカットシーンが従来の主観視点固定からより映画的な三人称視点に変わった事だ。元々個性的だったPsychoというキャラクターは、今回導入されたよりハリウッド映画さながらなカメラワークによって、更に魅力的に描き出されている。

また本作はPsychoとその仲間、そして宿敵のLee大佐という明確な構図が、最初から最後まで一貫して描かれていてブレがないのも良い。脳みそ筋肉な内容なのは相変わらずであるが、それでも前作と上手く差別化を図れているのは評価できる点だ。

Psychoの以外な一面も見れるかも・・・?

■相変わらず超綺麗、超重い

前作で最大の売りだった、圧倒的なグラフィックスは今回も健在だ。しかし絵作りや新規の武器や車両のデザインがアニメチックになっているのは好みが分かれる所だろう。

重さも相変わらずで、最高画質では満足なフレームレートが出せないのも前作のまま。前情報ではパフォーマンスは大分改善される話だったが、残念ながらその点は進歩がない。

ただ前作では排除されていたDX9環境での最高画質設定へのアクセスが、本作は標準で出来るようになった点は良い。

この映像美こそ『Crysis』シリーズのブランド力。

■更によりスーパーヒーローに成りきれるゲームへ

ストーリーがPsychoのキャラクター性を反映させたものになったとするなら、ゲーム性も同じくPsychoらしい内容に変わっている。一言にすれば、それはまさしく前作よりも更にスーパーヒーローに成りきれるゲームになったという事だ。

本作は前作よりも戦闘密度が格段に上がっており、一度により大勢の敵と対峙するシチュエーションが増えた。そしてそれに対応するようにプレイヤー側も銃の威力や命中率の上昇、手榴弾の所持数の増加、より強力な武器や車両の追加等などで更なる戦闘力を獲得した。

ここまで揃えば後はもうやることは決まっている。目の前の敵という敵をひたすら蹴散らしていくのみだ。手榴弾は1個ずつと言わずに何個も投げつけてやろう。固まってやってくる連中には、新武器のグレネードランチャーで一網打尽だ。敵車両だって今までみたいに燃料タンクをちまちま狙う必要なんてない。己が持つありったけの武器を、堂々と正面からお見舞いしてやればいいのだ。

正に敵をゴミのように蹴散らせるのは近年稀に見る爽快感である。引き換えに難易度は前作よりも低くなってしまっているが、それでも余りある気持ちよさは、前作のスーパーヒーローの成りきりという面をより明確なものにしている。

また前作で批判されたエイリアンの扱いも、今回は良い方向に傾いている。まずAIが改良されて、周囲の仲間と連携した行動を取ったり、巡回や索敵をする等行動の多様性が増している。登場の仕方も前作のように一辺倒ではなく、北朝鮮兵と絡み合って出てくるので、ゲームプレイに変化を生んで面白い。

ど派手な武器にど派手な演出。肉密度1000%とは正にこの事。

■自由度は大きく減退

より派手で爽快感が増した一方、自由度が大きく減退しているのは痛い点だ。

前作と『Warhead』の自由度の変化は、特にレベルデザインに注目して言うならば "面"から"線"への変化とする事ができるだろう。 前作ではまず箱庭としてのマップが大きくあって、その中では大方前後左右どちらの方向へもアクセスが可能な作りだった。 一方の『Warhead』では課題に対するアプローチの仕方がほぼ限定されてしまっており、 それを大きく迂回したり、或いは後ろからアクセスする、或いは避けて通るという要素は殆どなくなっている。極端な話道幅がやたらと大きいだけで、進行そのものは他のレールライドシューターと大差ない。

また前作の後半部分の極端なレールライドを改善したと言っているが、確かに北朝鮮兵とエイリアンが交互に織り成す形で登場してくるのは良い。しかし自由度に対する回答としは尚の事疑問が残る。

例えば前作の後半の強制的に車両に乗せられるパートが問題視され、その対策として本作では例え車両に乗るのが理想的な状況でも、それ以外の方法を採れる可能性を残している。しかし実際は乗らなくても進むことは出来るというだけの話で、そういう行動をとった場合の面白さは全く考慮されていないのだ。敢えて理想から外れた行動を取ったところで、単に道のりがやたら長くなるだけで緩慢である。

しかも無理に理想の方法以外も取れるようにしたが為に、本来そこで描かれるべきムードが台無しになっているのも問題だ。例えば仲間が乗った車両を自らも装甲車に乗って護送するシーンでは、プレイヤーがお膳立てを無視して徒歩で進もうとした場合に備えて、仲間は完全に無敵に設定されているのだ。挙句の果てには先に行っているぞとか言って一人で走り去ってしまい、これでは護送もクソもない。同じような事例が他にも幾つかあるが、これをギャグじゃなくて大真面目にやっているというのだから頭が痛い。

全体的により普通で作りやすい方向性にシフトしたという感じで、それがつまらないというわけではないが、ゲームとしての『Crysis』らしさが減退しているのは少し残念な点だった。

■まとめ

自由度の減退を除けば、前作との差別化が上手く働いており面白い。拡張パック扱いで価格も安いので、『Crysis』ファンなら間違いなく買いだ。

最後に冒頭で触れた本作のテストケースとしての成果についてだが、まだ明確な声明が出ていないので分からない部分が多いものの、興行的にはかなり善戦した印象を受けた。PCゲームファンとして、本作が次へと繋がってくれるのを祈ろう。



参考リンク

Crysis Warhead公式サイト
Crysis Warhead on Steam
PCゲーム道場 - Crysis Warhead レビュー
GAME LIFE - Crysis Warhead レビュー
FPS UnKnown - Crysis Warhead レビュー
aki_tan's page - Crysis Warhead 攻略
4Gamer.net - Crysis Warhead レビュー
GAME Watch - Crysis Warhead レビュー
4Gamer.net - [E3 2008#05]サイコ軍曹,かく戦えり。「Crysis Warhead」は2008年内の発売を目指して開発順調


2008/12/16
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