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2009/03/27 - 塊めるだけ


『ビューティフル塊魂』クリア。最終ステージでは宇宙に飛び出し、太陽系を跨いで星を取り込んでいく壮大なスケールの展開に。今までステージクリアの証として宇宙に浮かべてきた塊もここで一挙に集い、正に総集編という感じ。作品の締め方としては非常に上手い演出です。

加えてスタッフロールの扱いも面白かった。スタッフロールにどんな意義を見出すかは人それぞれだと思いますが、本作は「ぶっちゃけ退屈じゃね?」という事で縦スクロールのシューティングゲーム仕立てにしてしまっています。ただその中でちゃんとオールキャストが登場するようになっていて遊びながら余韻に浸れる作りになっているのが良かった。忙しくて横のスタッフ名を見る暇は一切ないけど。


ただ目を見張ったのはここくらいで、全体的には地味さや単調さはやや否めない内容。いや、悪くは無いんですがイマイチ冴えきらないモヤモヤ感が付きまとうと言うか。本作のパステルカラーのビジュアルのように、ゲーム内容も良いとも悪いとも言い切れないグレーな仕上がり。

まず本作は見た目や音楽を省いて純粋なゲーム部分だけを見た場合、その面白さは結局の所2点に集約されると思います。1つが塊の操る技術を磨いていく面白さで、もう1つが各ステージのルート開拓の面白さ。

前者は本作の良く出来ている点で、これに関しては最後まで楽しみ続ける事が出来ました。左右の両スティックを使う独特の操作方法と塊の癖のある動きは、とっつき易そうな印象とは裏腹にマスターするには相応の修練が必要。特にダッシュの扱いが秀逸で、慣れないと難しい発動方法に加えてダッシュ後のコントロールの難しさは、反面マスターした時には非常に効果的な能力になる事を意味しています。僕は既に全ステージでパーフェクトを取得しましたが、それでも尚掘り下げる余地が十分あり、これは素直に褒めたい。

しかしそれを打ち消してしまうほどステージの方に問題あり。原因は複数考えられますが順に見て行くと、まず各ステージごとでロケーションの使いまわしが目立つのが良くない。ゲームの手順としては毎回二箇所の町中からスタートし、ステージが進むにつれそこから出れるエリアが増えていくというデザインですが、毎回同じ場所からだと視覚的な鮮度がないし、また多少省略できるようになるとは言え、毎回前回以前のステージの工程を反復しなければいけないのはとても面倒。

更に言ってしまうとステージごとの特色付けも上手く出来ておらず、それが余計反復運動、単調と思わせてしまう要因に。ステージでは毎回異なる優先的に巻き込むべきものが提示されるものの、それは実際は単に選り分けるものの見た目が変わるというだけで、課題ごとの対策の必要性が貧しい。ここで海のものを集める時には何々に気をつけなければいけない、山のものを集めるのならばまず特定の手順を踏まなければいけないみたいな直接的な変化を与えてくれれば良かったのに。

後は難易度も終始変わらずなのも単調に感じさせる要因か。どのステージもクリアだけなら等しく簡単で、パーフェクト取るのは等しく難しい。 ・・・なんか駄目な所ばっかじゃん。しかしそれが『ビューティフル塊魂』の実態であって、じゃあなんで世間でそれにも関わらずある程度評価され、自分もクソ認定はしないかというと、やっぱそれはグラフィックスや音楽の良さに拠る所が大きいですね。本作は塊を転がしながらのどかな見た目や音楽に癒される。それが正しい遊び方の1つであり、また開発者も意図しているものだと思います。

グラフィックスは前の日記にも書いたとおり技術的には何ら目を見張る点はありませんが、モデリングのデフォルメの仕方のユニークさや、茶目ッ気の利いたシチュエーション作り、庶民的な日本情緒にピントを合わせたデザインが魅力的。音楽は毎回著名なアーティストのオリジナルソングを丸々BGMとして流すというあまり例のない手法。本作では宇都宮隆や斉藤由貴などが参加しています。

ただこの点に関しても僕は注文を付けたい。まずグラフィックスは細かい部分が凝っているのが良いが、物が多い上に全てにピントがあった画面は雑然としているとも言え、またパステルカラーを基調にしているのは、調和という点では良いがここ一番という時のパンチに弱い。ハッキリ言うと最終ステージの宇宙みたいな迫力があり尚且つ派手な箇所がもう少し欲しかった。

BGMはクオリティは相変わらず高いと思うが、流石にシリーズ3作目にあって曲の方向性がマンネリ気味な気も。初代は松崎しげるや松原のぶえ、田中雅将などとパンチの利いた顔ぶれで、曲もラップ、ジャズ、サンバ、合唱などバラエティに溢れていた。今回特別気になったのは先の宇都宮隆ら2人位かな。ネタ的にはアイマスも良いけど。

後は最後にやはり『Mirror's Edge』との比較は終始せざるを得なかった事も書いておきたいです。競技性の高いレースのようなゲーム性ですから両者ともプレイ中に使う頭の部分が一緒なんですよね。しかし一緒なのに何故片方は良いと思えてもう片方はそれに劣るのか。その理由は以前の日記に書いたとおり。ゲーム性にせよ見た目にせよ、どうやって限られたリソースの中で単調じゃないよう思わせるのか、或いは単調じゃないような見た目にするのかという点について大分学べるものがあるんじゃないかなぁ。

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