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2009/07/05 - 逃れられるものなら!!


先月の頭から描き始めていて、完成間際に忙しくなってしまい、それからちまちま描き続けてやっと完成しました。話が前の日記と繋がる部分があるので一緒にしたかったのですが、それだと論旨がハッキリしないのでエントリーを分けました。気がある人は前の日記に目を通しつつこれを読んで頂けると有難いです。作品タイトルは『逃れられるものなら!!』。

作品の立ち居地はPixivフェスタに出展する作品の反省から作られたもので、我が家の母が介護を苦に家出してしまった事件を基にしてします。ここでも触れていた4月末の引越しは父方の祖父の介護が目的だったのですが、それが紆余曲折あって現在も不安定な日々が続いています。

ただこれを描く直接的なきっかけはPixivフェスタ用の作品。前の日記にも書いたように、僕はオタク文化とアートの中間点というか、オタク文化にある微細な何かを一般化して描きだす事を目指して作品を作っています。ただ実際には丁度いいポイントを探るのは容易ではなく、ある時は作品をオタク寄りに振ったり、またある時はちょっとそこから外してみたりとまるで振り子のように作品の重心をその都度変えながら試行錯誤を繰り返している毎日です。

ただ最近はずっとオタク寄りに振った作品作りを心がけていていたのですが、例の作品で振り切り過ぎて本来意図していたものが霧散してしまっているのではないかという疑問が生じてきました。加えて毎回自分が作品に加味している社会的テーマの軽薄さ、大義名分とは別に純粋に自分が制作によって発散させたい欲求を適えられない欲求不満等などが一気に気になりだして、こりゃイカンなと舵を切りなおす必要性を感じてきたのです。

僕は作品を作る上で常に自らの二面性に相対する。1つはオタク側に居る己で、アニメやマンガを好み、美少女やそのグラマラスな身体を描くのをこよなく愛する。もう1つはアート側に居る己で、美術作品やそれに限らず日常における非日常的、或いは社会派な事物を好み、不安や強迫観念といった負の感情を描くのをこよなく愛する。

このHPのギャラリーの後ろの方にある『本当のチェルノブイリ』や『世界はここにある』等の初期の作品はこのアート側の己の欲求のみに忠実に描いたものであり、表現手段もデジタルではなく油彩。また『ツーフェイス』は同じ秋葉原という舞台に、己の二面性をそのまま両極端に描き分けてみせた例です。これは本来は一方をプロジェクターで投影し、もう一方を油彩による実物のキャンバスをそれぞれ並べて見せる趣旨のものでした。

前述したオタクとアートの中間点云々という命題は、言い換えれば己の二面性の両立という事でもあります。本来水と油の両者を一致させる事が自らの同一性を確たるものにするために必要な事であり、ひいてはオタク縁のイラストやそれを縁とするアートに対して新たな知見が得られるのではないかという思いがあります。ただそれを未だ果たすことなく、オタク寄りに走りきった末にもう一方の自分から待ったの合図が出たわけですね。

更に時大体同じにして母が「私にだって親が居るのにあんたの親を悪態つかれながら面倒見続ける義理はないわよ!」と言い捨てて家を飛び出す事件が発生し、絵の悩みとは全く別に頭を抱える日々が続きました。またそれまで介護の大部分を母が担ってきたわけですが、それを肩代わりせざるを得ない状況になって色々と大変な目に遭う、もとい母の大変さをしみじみと感じるのです。

ただこれは我が家の個人的な問題でありながら、同時に介護という社会全体の問題でもあります。逆に言うならば社会問題を親身に捉えるには、字の通り自らの身でもって体験するしかない。そして今その通りの問題に直面している我が家の事態を絵に還元すれば、軽薄止まりで今まで捉えられなかったものを定着させる事ができるのではないか。そしてそれは今までのオタク寄りの表現手法では役不足が過ぎる。二面性の重心は考慮しつつも、今こそ針を逆に振りなおして描こう。そして出来上がったのが今回の作品です。

何度も言っているように二面性の統一を命題としている自分としては、これもまたPixivフェスタの作品同様振り切れすぎに当たるので当然ベストアンサーではありません。ただどちらか一方に偏らず両方に振りつつ、徐々に精度を上げていくのが探求の仕方としても精神衛生的にも健全であるという事が分かったのは収穫でした。また観察対象や実体験も事欠きませんし、まぁそれぐらいの気概でないとやっていられないのですが、この調子でまた描き続けられればと思っています。

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